日本大百科全書(ニッポニカ) 「アモルファス半導体」の意味・わかりやすい解説
アモルファス半導体
あもるふぁすはんどうたい
amorphous semiconductor
規則正しい原子配列をもたない半導体。非晶質半導体ともいう。一般に固体結晶は、常温で低い電気抵抗をもち温度上昇とともに抵抗が上がる、いわゆる金属と、常温で比較的高い電気抵抗をもち温度上昇とともに抵抗が下がる、いわゆる絶縁物または半導体とに分類できる(ただし、半導体は常温での電気抵抗は金属と絶縁物の中間に位置する)。結晶性をもたない半導体を総称してアモルファス半導体とよぶ。おもなアモルファス半導体には、セレン、テルルなど16族元素を主要成分として含むカルコゲナイド系のものと、ゲルマニウム、シリコンなど4族元素を主要成分として含むテトラヘドラル系のものがある。
アモルファス半導体は決まった結晶構造をもたないので、真空蒸着法、高周波スパッタ法、化学気相反応法などの薄膜形成技術を用いて、大面積の基板上に薄膜の形で堆積(たいせき)することができる。
[丸山瑛一]
用途
アモルファス半導体の利用は、1950年代にセレンを用いた電子写真感光膜や撮像管の光導電膜が開発されたことに始まる。とくに電子写真は複写機産業の基幹技術として大きく発展した。カルコゲナイド系のアモルファス半導体は可逆光メモリ材料として光ディスクに用いられた。1975年にpn制御ができるテトラヘドラル系の水素化アモルファスシリコンが新しい半導体材料として注目され、その後、実用化の研究が進み、光センサー、電子写真などの感光材料や薄膜太陽電池、薄膜トランジスタ(TFT)材料として広く利用されている。とりわけアモルファスシリコンTFTは低温多結晶TFTと並んで液晶テレビや携帯電話、デジタルカメラなどのディスプレー用素子として巨大な市場を占有している。
[丸山瑛一]