生児が初外出する時に鍋墨や紅で×や●の印あるいは犬,大などの字を額に書く風をいう。初宮参りの帰途に親戚の家でつけてもらったり,雪隠(せつちん)参りや橋参りの時につける所もあり,東北地方ではヤスコ,淡路島ではヤッコという。犬の字を書くことが多いのは,犬は産が軽くしかも丈夫に育つと信じられたため,犬にあやかろうという俗信によると思われる。しかし,×や大の印にも見られるように,アヤツコのアヤは二つの線の交差も意味し,また便所や橋もある意味で二つの世界の境にあるものだから,あの世からこの世への社会的な誕生をあらわしたもので,通過儀礼の一つであるというのが本来の意味であろう。のちに,魔除けとか幸運を招くまじないと解されるようになったのである。アヤツコは,子どもの衣服の背の部分に背守としてつけられたり,海女のアワビの採取具につけられ,魔除けとされている。江戸時代には犯罪者にもアヤツコに似たものが額や腕に入墨された。
執筆者:菊池 健策
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…菅笠やむつきをかぶせて竈神,井戸神,厠神(かわやがみ),屋敷神などの家の神々に参って供物をする土地もある。このときあやつこといって,生児の額に男子には鍋墨で犬の字,女子には紅で ・ 印をつける。これは悪魔を払うためといわれ,東北地方ではヤスコと呼んでいるが,やはり神の子として生児が承認されたしるしでもある。…
※「あやつこ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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