アラフォー・クライシス(読み)あらふぉー・くらいしす

知恵蔵 「アラフォー・クライシス」の解説

アラフォー・クライシス

バブル経済崩壊後の就職氷河期(1990年代半ばから約10年)に社会人となった、35~44歳の「アラフォー(「アラウンド・フォーティー」の略語)」世代の人たちが陥っている危機的な状態のこと。日本の労働人口の多くを占め、働き盛りでありながら安定した職に就くことが困難で収入低い正社員でも上下の世代と比べて給与が低く抑えられたり昇進が遅かったりする、これらの理由で結婚・出産できない、など問題は多岐にわたっている。
2017年12月、NHKのテレビ番組「クローズアップ現代+」で命名され、話題となった。
アラフォー世代は企業が新卒者の採用を控えた就職氷河期に社会に出たため、フリーター派遣社員といった非正規雇用労働者となった人が多かった、正社員として採用されても希望した会社に就職できずに転職を繰り返して収入が下がった、多数採用されたバブル世代がつかえているために昇進できず賃金が伸び悩んでいる、などが、現在の危機的な状況の原因として挙げられている。公益財団法人連合総合生活開発研究所の調査によると、2015年の世代ごとの月収を5年前と比較した結果、大学・大学院卒では、ほとんどの世代で軒並み上昇する中、35~39歳でマイナス4300円、40~44歳ではマイナス2万3300円と下がっていた。
アラフォー世代が直面する問題として、最近では、70代の親と40代の子どもの同居に内在する問題も注目されている。就職氷河期に非正規雇用となり、同居する親に生計を支えられていた子どもが、高齢となった親の病気や介護によって離職せざるを得なくなったり、親が死亡したりして貧困に陥るリスクが高まっている。これとは別に、自立が困難な親族がいた場合、自身に経済的な余裕がなくとも支えようとした結果、共倒れになるリスクも指摘されている。
これらの問題に対応するため、国や自治体は様々な施策に乗り出している。国は17年、就職氷河期世代の雇用を改善するための助成金制度を創設した。5回以上の離職や転職を繰り返す35歳以上60歳未満の人を正社員として採用した企業に、最大60万円を支給する。また、東京都は、正社員としての就職を目指す30~44歳を対象にした就労支援プログラムを実施している。受講者は、2カ月の職務実習型プログラムの中で企業訪問やグループでのディスカッションなど実践的な経験を積む。実習1日当たり5000円の就活支援金が支給される。

(南 文枝 ライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「アラフォー・クライシス」の解説

アラフォークライシス

他世代の給与が全体的に増額している一方で、2018年前後に35~44歳となるアラフォー世代の給与だけがダウンしている状況。新卒時の就職活動期から20代後半が「失われた10年」と呼ばれる低成長期にあたり、スキルを開発する機会に乏しかったことや、転職を重ねたために勤続年数が短く、企業から教育投資を受ける機会が少なかったことなどが原因とされている。また、30代・40代に求められるマネジメント経験を積んでいないことなどから求人市場での価値が低く、転職活動が困難な状況にある。70代の親が40代の子を年金で養う「7040問題」や、本人が高齢期を迎えたときの貧困につながるとして対策が求められている。

(2018-3-1)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

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