アルフィエーリ(読み)あるふぃえーり(英語表記)Vittorio Alfieri

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルフィエーリ」の意味・わかりやすい解説

アルフィエーリ
あるふぃえーり
Vittorio Alfieri
(1749―1803)

イタリアの劇作家詩人。イタリアの先駆的なロマン主義者といわれている。1月16日アスティに生まれる。父はピエモンテの富裕な貴族伯爵)。誕生後まもなく父を亡くし、9歳のときにトリノの士官学校に送られるが、学校の古くさい教育に嫌気がさし、文学書を読み、詩を愛した。1766年に学校を出ると、イタリア、フランス、イギリス、ドイツ、ロシア、スペイン、ポルトガルと、旅をしてまわった。1772年にトリノに帰り、続く3年間は恋愛と著作のために過ごした。1775年その最初の悲劇『クレオパトラ』を上演し、成功を収めた。イタリアの古典作家たちが用いたトスカナのことばを学ぶためにフィレンツェへ行き、ダンテペトラルカアリオストタッソなどを読み、数々の作品をイタリア語で書いた。その地でマキャベッリを読み、パッツィの陰謀の主題で悲劇を書くように勧められたが、『専制政治について』という政治論を書いた。

 1777年にオルバニーの伯爵夫人ルイザ・ストルバーグと知り合う。それ以後のもっとも多産な時期に、イギリス(1783~1784)とフランス(1787~1792)を旅行。パリで『自伝』を書き始め、自分の悲劇集(19編)の新版を編んだ。そのうち『サウル』と『ミッラ』は、彼の最高傑作である。その地でフランス革命の勃発(ぼっぱつ)に立ち会い、『バスティーユなきパリ』という詩を書いた(1789)。だが革命が暴力と流血惨事に埋没するのに失望し、批判的になる。1792年ストルバーグ夫人とともにフィレンツェへ戻る。晩年ギリシア語を独習し、ギリシア悲劇やホメロスやアリストファネスなどを読み、風刺詩や喜劇作品を書いた。1803年10月8日没。フィレンツェのサンタ・クローチェ教会に埋葬された。彼の作品はイタリアのロマン主義文学やイタリア民族独立運動に霊感を与えた。

[佐藤三夫]

『Bruno MaierAlfieri (1973, Palumbo Palermo)』『Leonello VincentiAlfieri e lo Sturm und Drang e altri saggi di letteratura italiana e tedesca (1966,Olschki Firenze)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルフィエーリ」の意味・わかりやすい解説

アルフィエーリ
Alfieri, Vittorio

[生]1749.1.16. ピエモンテ,アスティ
[没]1803.10.8. フィレンツェ
イタリアの詩人,劇作家。イタリア悲劇の創始者。貴族の家に生れ,若年からイタリアの古典文学に親しみ,国内はもとよりヨーロッパ全土を旅行,遊蕩児の名をはせたが,広く新旧の思想と文学に通じ,特にモンテスキューから多大の影響を受けた。代表作は悲劇『サウル』 Saul (1773) ,『ミルラ』 Mirra (84~87) など。また波乱に富んだ放浪の生涯を回想した『自叙伝』 Vita (1804) がある。作品を通じて民族精神の覚醒を促し,リソルジメント (国家統一運動) の先駆者と目される。

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