サウル(読み)さうる(その他表記)Šā'ûl ヘブライ語

デジタル大辞泉 「サウル」の意味・読み・例文・類語

サウル(Saul)

[?~前1010]イスラエル初代の国王在位、前1020~前1010。預言者サムエルによって王位につき、ペリシテ人攻勢と対抗、王国の基礎をつくった。のちサムエルと不和を生じ、ペリシテ人との戦い戦死
アルフィエーリ戯曲。1782年の作。旧約聖書サムエル記挿話題材とする。歴史的な出来事や伝説、神話に取材した悲劇シリーズ(全19編)の作品のひとつ。

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精選版 日本国語大辞典 「サウル」の意味・読み・例文・類語

サウル

  1. ( Saul ) イスラエル王国の最初の王(在位前一〇二〇‐前一〇〇〇頃)。ペリシテ人の侵略に対抗するために統一国家の王を必要としたとき、預言者サムエルに選ばれて王位につき、アンモン人を撃退して民衆の要望にこたえた。のちペリシテ人の攻撃を受けてギルボア山で戦死した。前一〇〇〇年頃没。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サウル」の意味・わかりやすい解説

サウル(古代イスラエルの初代の王)
さうる
Šā'ûl ヘブライ語
Saul 英語

古代イスラエルの初代の王(在位前1020~前1010)。イスラエル諸部族の一つベニヤミンの出身。サウル以前のイスラエルは、政治的統一を欠いた部族連合であり、対外的脅威が起こったときにだけカリスマ的な軍事指導者がこれを統率した。長身の美男子で勇気に富むサウルは、イスラエルの民が王を待望したときに、預言者サムエルによってみいだされ、「王万歳」という民の歓呼を得て王となった。サウルの軍は、ペリシテ人に比べ武器のうえで劣勢であったため、勇気が重んじられた。ダビデもそういう部下の一人である。ダビデの冷静・沈着な行動に比べ、サウルには直情的な性格があり、人気をねたんで執拗(しつよう)にダビデ殺害を図る。のちペリシテ人との戦いに敗れて、ギルボア山中で自害する。このとき、ダビデはその死を悼んだ(「サムエル記」上・9~31章、下・1章)。

[市川 裕]


サウル(アルフィエーリの悲劇)
さうる
šaul

イタリアの劇作家ビットリオ・アルフィエーリの代表的五幕悲劇。1782年作。『旧約聖書』の「サムエル記上」から材を得た詩劇。王サウルから退けられたダビデは、ギルボアのイスラエル軍の陣地にやってくる。サウルの息子、親友ヨナタンと会い、サウルが悪霊に取り憑(つ)かれ、アブネルの言いなりになっている事実を告げられる。ダビデはサウルとも会って和解を図るが、アブネルによる中傷やサウルの狂気に妨げられて果たせない。ダビデはサウルのもとでペリシテの軍と戦おうとするが、彼を弁護する祭司を殺され、また彼の戦略を否定されて、逃亡を余儀なくされる。サウルは悔恨のうちに狂い、攻め入る敵軍を前に自刃する。

[佐藤三夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「サウル」の意味・わかりやすい解説

サウル
Saul

イスラエル初代の王。在位,前1020ころ-前1000年ころ。ヨルダン川東側の民の侵略を撃退して北方諸部族の王に推され,サムエルにより認定される。海岸地方より持続的な軍事的圧迫を加えていたペリシテ人に対抗するために,伝統を超えた軍事行動を試みてサムエルから見捨てられ,またダビデの軍事的才能を恐れて殺害を企てるなど,晩年は精神が不安定となった。ペリシテ戦にも敗れて,長子ヨナタンとともにギルボア山で戦死した。両者の戦死を悼むダビデの〈弓の歌〉(《サムエル記》下1)は有名。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サウル」の意味・わかりやすい解説

サウル
Saul

[生]?
[没]前1010頃
イスラエルの小部族ベニヤミン族の富農キシの子。イスラエル最初の王 (在位前 1020~10頃) 。ペリシテ人の迫害に悩むイスラエルの長老たちによって王を立てることを強く要求された預言者サムエルは,主の言葉に従って丈高く美しい青年サウルに油を注ぎ王となるべきことを伝えた (サムエル記上 10・1) 。サウルは王となり,アンモン人,アマレク人などを征服したが,ペリシテ人との戦いには苦戦を続け,やがて神の言葉にもそむきサムエルとも不和となった。またペリシテ人との戦いに数々の武勲を立て,人々に愛されるようになった部下の将ダビデが主とともにあるのをみて嫉妬し,彼を殺そうとしたが果せなかった。やがてペリシテ人との戦いに敗れ,ギルボア山中で自殺した (同 31章) 。

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百科事典マイペディア 「サウル」の意味・わかりやすい解説

サウル

イスラエル王国初代の王(在位前1020年ころ―前1000年ころ)。ベニヤミン族の出身。預言者サムエルによって即位。モアブ,アンモン,エドム,フィリスティア(ペリシテ),アマレク諸族との戦いに勝利をおさめ,王国を危機から救った。後,ギルボア山でフィリスティア人と戦い,その子ヨナタンらとともに敗死(《サムエル記》)。
→関連項目イスラエル王国ダビデ

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「サウル」の解説

サウル
Saul

(在位前1020頃~前1010頃)

イスラエル王国の指導者。預言者サムエルにより初代の王とされる。鉄器で武装した軍隊を率いてペリシテ人の侵入に対抗したが,ギルボア山の戦いで敗れて自殺。

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旺文社世界史事典 三訂版 「サウル」の解説

サウル
Saul

生没年不詳
『旧約聖書』の伝承にあるヘブライ王国の建設者,初代の王
エジプトの支配力の衰えに乗じ,ペリシテ人・アンモン人らと戦って勝ち,前1025年ごろパレスチナに建国した。のちペリシテ人に破れて戦死。歴史的には不確実。

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世界大百科事典(旧版)内のサウルの言及

【イスラエル王国】より

…前1020年ころ,預言者サムエルの指導の下に,イスラエル諸部族がベニヤミン族出身のサウルを王に選び,近隣諸民族の王政にならって建てた王国。それまでの緩やかな部族連合では,海岸地帯から内陸に向かって勢力を拡大してきたフィリスティア人(ペリシテ人)に対抗できないと悟ったからである。…

【サムエル記】より

…書名にもかかわらず,預言者サムエルが主役を演じるのは上8章までと12章のみである。上1~7章は,シロの神殿に仕えたサムエルの少年時代,シロを中心とするイスラエル部族連合がペリシテ人に敗北した経緯,士師サムエルの活動などについて,上8~15章は,サウルがイスラエル初代の王に選ばれたいきさつ,サウルとペリシテ人の戦い,サウルとサムエルの仲たがいなどについて語る。上16~下8章には,サウルの宮廷に仕えた牧童ダビデが,多くの苦難を乗り越えてついにイスラエルとユダの王となり,大帝国を建設したことを物語る〈ダビデ台頭史〉,下9~20章には,ダビデの王子たちの争いと反乱などを伝える〈ダビデ王位継承史〉(《列王紀》上1~2章に続く)が認められる。…

【ダビデ】より

…ユダのベツレヘムのエッサイの子。羊飼いの少年ダビデは,琴の名手として,悪霊に悩まされていたイスラエル王サウルを慰めるため宮廷に出仕した。別の伝承によると,ペリシテ人の勇士ゴリアテGoliathを倒して認められ,サウルに仕えるようになったという。…

※「サウル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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