日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンジェイエフスキ」の意味・わかりやすい解説
アンジェイエフスキ
あんじぇいえふすき
Jerzy Andrzejewski
(1909―1983)
ポーランドの小説家。ワルシャワ大学でポーランド文学を専攻、1932年に短編『うそつき』でカトリック作家としてデビュー、『心の秩序』(1938)で1939年に文学アカデミーの新人賞を受けた。ナチス占領中の地下文化活動を通して共産主義者となり、以後、作品は現代のモラルと政治がテーマとなった。戦争終了後、戦争文学の代表作となった『夜』(1945)を発表、『灰とダイヤモンド』(1948)で最初に戦争直後の国内のモラルと政治の混乱が引き起こす悲劇を描いて成功し、作家としての地位を不動のものとした。スターリン体制を経験し、自由主義者となり、公然と体制批判を行い話題となった。1976年につくられた反体制組織「社会自衛委員会」に主要メンバーとして参加。最後の長編『どろどろ』(1982)で自らの精神の遍歴を知識人の苦悩として描き注目を集める。国会議員も経験。おもな作品に短編集『金色のキツネ』(1955)、長編『闇(やみ)は大地をおおう』(1957)、『天国の門』(1960)、『とびはねて丘を行く』(1963)などがある。
[山田正明]
『川上洸訳『灰とダイヤモンド』(旺文社文庫)』