熱帯アメリカに600種以上分布するサトイモ科の常緑草本で,茎が木質化することもある。オオベニウチワA.andreanum Lind.(英名flamingo-flower)やそれとの交配種は切花としてよく利用される。花弁のように見えるエナメル質光沢のある心臓形の部分は,肉穂花序を包む仏焰苞(ぶつえんほう)で,赤色,ピンク,白色など多彩である。明治中ごろに渡来した。ベニウチワA.scherzerianum Schott(英名flamingo-flower)は,葉が濃緑色の細長い小型種で,鉢植えに向く。仏焰苞は長楕円形で,光沢はないが,朱赤色,ピンク,白色,白地に赤色の吹掛け,などいろいろな園芸品種が育成されている。明治中ごろに渡来した。アンスリウム・スカンデンスA.scandens Engl.(英名pearl anthurium)は茎が細くややつる性で,支柱なしでは倒れやすい。花より果実を楽しむ種類で,直径7~8mmの白色または淡紫色の液果を多数つけ,長期間美しい。ナガバオオウチワA.warocqueanum Mooreは長く大きいビロード光沢のある濃緑色の葉をつけ,葉脈が白色で美しい観葉種である。そのほかにもアメリカを中心に多くの種類が観賞用に栽植され,また多数の交配雑種起源の品種が育成されている。
アンスリウム属Anthuriumは高温多湿を好み,冬でも15℃以上が望ましい。株分けや実生でふやす。夏は半日陰で育て,霧吹き状に水を多くやり,湿度を保つ。
執筆者:高林 成年
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サトイモ科(APG分類:サトイモ科)の観葉植物。熱帯アメリカ原産。葉のとれたあとが茎状となり伸びるが、ほとんど茎のない種類もある。葉は長い葉柄をもち、心臓形、長楕円(ちょうだえん)形、掌状と変化に富む。園芸品種として花(仏炎包(ぶつえんほう))の美しいものと葉の色彩模様の美しいものが栽培される。代表種は、ハワイの切り花として有名なオオベニウチワと鉢花向きのベニウチワで、ほかに葉が広心臓形、表面が暗緑色ビロード状で葉脈のみが銀白色のクリスタルリナム、ビロードウチワ、細長い肉厚の葉が深緑色ビロード状のワロクェアナムがよく知られる。冬の管理がたいせつで、15℃以上を保ち湿度を高くする。繁殖は、種のできるものは実生(みしょう)。茎状部分で取木も可能。
[坂梨一郎 2022年1月21日]
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