改訂新版 世界大百科事典 「アンネンコフ」の意味・わかりやすい解説
アンネンコフ
Pavel Vasil'evich Annenkov
生没年:1813-87
ロシアの回想録作家。シンビルスクの富裕な地主の出。ペテルブルグ大学で聴講。1833年より大蔵省に勤務,間もなくこれを去り,初期スラブ派,西欧派の文人,思想家たちと交わる。40-43年外遊,ひと夏をローマでゴーゴリと過ごす。46-48年再度外遊,46年春ブリュッセルでマルクスに,夏パリでゲルツェンに,47年夏ザルツブルクで療養中のベリンスキーに会い,有名なゴーゴリあて書簡の執筆に立ち会う。50年以後は穏健自由主義者として若い世代の急進主義に抗し,40年代知識人の伝統を守った。著作家としてはディレッタントに終始したが,その回想は客観的な記述と鋭い洞察から成り,時代を知るための不可欠の資料である。《ローマのゴーゴリ,1841年夏》(1857),ベリンスキーを中心に40年代の群像を描く《大いなる十年,1838-1848年》(1880),《ツルゲーネフの青春》(1884)等の作品があり,生前3巻の著作集(1877-81)が刊行された。
執筆者:青山 太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報