アンヒューマ科Amphiumidaeの原始的な両生類で,コンゴウナギCongo eelの別名で呼ばれる有尾類の総称およびその1種を指す。1属3種だけで1科を構成し,アメリカ合衆国南東部の限られた地域に分布する。種によって後肢の指の数が異なり,アンヒューマAmphiuma meansは2本,ミツユビアンヒューマA.tridactylumが3本,ヒトツユビアンヒューマA.pholeterが1本である。体長50~110cmほど。ウナギ形で胴は円筒形で長く,尾は短い。四肢と各指は退化して極端に小さく,ほとんど役だたない。変態後の成体には多分に幼生の形質が残っており,外鰓(がいさい)が消失して肺を生じても1対の鰓孔(えらあな)があり,小さな目にはまぶたがない。一生を池沼の水底の穴で過ごし,大雨の後や産卵期にのみ陸に姿を見せる。交尾は水中で行い,夏の終りころ150個ほどの紐状卵塊を水辺の倒木や岩の下など湿った土に産むが,雌は卵塊に体を巻きつけて乾燥を防ぐ。幼生は約5ヵ月で孵化(ふか)し,体長約7cmほどに発育すると外鰓を失う。歯が鋭く貪食(どんしよく)で,餌は水生昆虫,小さな両生類,魚,ザリガニなどのほか,ときには共食いも行う。動物界で最大の赤血球の持主で直径70μにも達する。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
両生綱有尾目アンヒューマ科の動物。水中性で、アメリカ合衆国南東部の池、溝、河川に生息する。全長30~75センチメートル。体は細長く四肢がきわめて小さいため、外形はウナギに似る。指は各肢に2本。変態時にえらは消失するが、鰓孔(さいこう)があることや、まぶたのない点で幼生の特徴を残している。背面は暗褐色ないし黒色。腹面は暗灰色。水底の泥の中や石の間に隠れ、近寄ってきた魚やザリガニなどを捕食する。性質は荒く、人をかむこともある。水辺の倒木や石の下の浅いくぼみに数珠(じゅず)状の卵嚢(らんのう)を産み、雌が保護する。アンヒューマ科は1属3種よりなり、すべてアメリカ合衆国に産する。
[倉本 満]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…つまり原産地のものは幼生形すなわちネオテニー形であり,これに甲状腺ホルモンを補給すると変態が起こる。サンショウウオおよびイモリの仲間(有尾両生類)には終生えらをもつなど幼生的な形態を示す種がいろいろある(いずれも北アメリカ産でテキサスホライモリTyphlomolge rathbuni,マッドパピーNecturus,えらを体内にもつアンヒューマAmphiuma means)。これらはネオテニー形が固定したものと解釈することもできる。…
※「アンヒューマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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