日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アース・ウインド&ファイアー
あーすういんどあんどふぁいあー
Earth, Wind & Fire
アメリカのダンス・ミュージック・バンド。1969年に結成され、1970年代なかばから1980年代初頭にかけて全盛を誇った。ジャズやソウル・ミュージック(リズム・アンド・ブルース)だけでなく、ブラジルのサンバやカリブ海音楽など、それまでの黒人音楽のエッセンスを総合的に取り入れ、汎アフリカニズム的な音楽性を打ち出した。
バンドは、リーダー兼ボーカリストのモーリス・ホワイトMaurice White(1942―2016)と弟のベーシスト、バーダイン・ホワイトVerdine White(1951― )によってシカゴで結成され、その後、美しいファルセット(裏声)を聞かせるフィリップ・ベイリーPhilip Bailey(1951― )らが加わることで幅広い音楽性を獲得していった。ジャズの即興演奏の要素を盛り込んだホーン・アレンジ、黒人コーラス・グループらしい色彩豊かなボーカル、そしてダイナミックなリズムと、巧みに構成された彼らの音楽は、アメリカにおいては黒人層だけにとどまらず白人層にも広く受け入れられた。
彼らが人気をつかみ始めた1970年代前半は、アメリカの黒人が新しいタイプのダンス・リズムを作り上げた時代だった。ファンク・ミュージックとよばれる粘っこい感覚をもったこのリズムは、ジェームズ・ブラウンやスライ&ザ・ファミリー・ストーン、ジョージ・クリントンが率いたファンカデリックやパーラメントなどによって多様なバリエーションが作られた。さらに、こういったファンクやラテン・ダンス・ミュージック(サルサ)の上澄みを吸収し、いっそうわかりやすいビートに変えたのが、「ディスコ・ミュージック」とよばれる音楽だった。アース・ウインド&ファイアーは、これら広い意味での黒人系ダンス・ミュージックが巨大なマーケットを獲得した時代に、もっとも洗練された音楽を聞かせるバンドとして筆頭の位置を獲得することになる。
1973年のアルバム『ヘッド・トゥ・ザ・スカイ』から始まった彼らの爆発的な人気は、『暗黒への挑戦』『灼熱の狂宴』(ともに1975)、『魂』(1976)、『太陽神』(1977)、『黙示録』(1979)と続いていった。この間、彼ら自身の「シャイニング・スター」「セプテンバー」「レッツ・グルーブ」「ブギー・ワンダーランド」のほか、モーリスが総合プロデュースした女性コーラス・グループ、エモーションズの「ベスト・オブ・マイ・ラブ」など多くの大ヒットを生み出した。
1980年代に入ってからは1970年代後半ほどのエネルギーを持続することができず、1980年代なかばに一時的に解散し、1987年に再結成している。1990年代以降はディスコ・リバイバルが断続的に起こることもあり、日本にもたびたび訪れている。
[藤田 正]