イェニ・チェリ(読み)いぇにちぇり(英語表記)yeni cheri

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イェニ・チェリ」の意味・わかりやすい解説

イェニ・チェリ
いぇにちぇり
yeni cheri

オスマン帝国における常備有給の歩兵親衛軍団。「新軍」を意味する。ムラト1世(在位1362~1389)の治世に創設されたらしい。原則的にヨーロッパ新属領のキリスト教徒子弟を徴用してイスラム教に改宗させ、厳格な訓練を施したのち、スルタンの常備親衛軍に入れた。結婚したり商業に従うことは禁じられたが、高禄(こうろく)を受け、高位高官に栄進する登竜門であったので、自分の子弟を志願させるキリスト教徒も現れた。スルタンに忠誠を誓い、とくに14~16世紀におけるトルコの征服戦争に武功をたて、トルコ兵の花形とされた。しかし、のちには軍紀が乱れて横暴専権を極め、スルタンの廃位にも介入し、また、マフムート2世(在位1809~1839)の近代化政策に反対したので、マフムート2世は1826年その兵舎を砲撃し、これを廃止した。

[護 雅夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イェニ・チェリ」の意味・わかりやすい解説

イェニチェリ
Yeniçeri; Janissaries

オスマン帝国の近衛歩兵軍団。 14世紀後半ムラト1世によって創設され,1430年頃までに制度的に完成された。帝国領内のキリスト教徒住民から強制徴用した年少者をイスラム教の戦士として訓練育成し,オスマン帝国軍の中核とした。身分的にはスルタンの奴隷であったが,大宰相をはじめ文武の高官が彼らのなかから出た。 16世紀以降特権濫用と軍紀弛緩のため制度的に崩壊し,1826年マフムート2世によって廃止された。

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