日本大百科全書(ニッポニカ) 「イェルザレム」の意味・わかりやすい解説
イェルザレム
いぇるざれむ
Wilhelm Jerusalem
(1854―1923)
ボヘミア生まれの哲学者、社会学者。1920年以後ウィーン大学の哲学教授。当時のカント主義、現象学などの先験主義、論理主義に反対し、スペンサー、デュルケーム、レビ・ブリュール、マッハなどの影響下に、人間の精神を、生物学、心理学、社会学などを融合させた発展史的な観点からとらえようとした。その基本的傾向は「知性化」「個別化」の過程として示されているが、究極的には、この個別化過程がコスモポリタニズムに至るという信念をもっていた。このような発展史的哲学に基づいて一種の認識の社会学ないし社会学的認識論を企図したが、彼の生物学主義が、知識社会学としては問題を狭めていることは否めない。認識社会学についての論文のほか、著書に『心理学教程』Lehrbuch der Psychologie(1887)、『社会学入門』Einführung in die Soziologie(1926)などがある。
[徳永 恂 2015年2月17日]