イチハツ(読み)いちはつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イチハツ」の意味・わかりやすい解説

イチハツ
いちはつ
[学] Iris tectorum Maxim.

アヤメ科(APG分類:アヤメ科)の多年草。中国内陸部の原産で江戸時代から栽培されていた。根茎は太く、短く、叢生(そうせい)する。葉は淡緑色で先は鋭くとがり、長さ30~60センチメートル、幅2.5~3.5センチメートル、平滑で中央脈は不明瞭(ふめいりょう)、基部で扇状に開く。4~5月に花茎を30センチメートルくらいに伸ばし1~2枝を出し、各枝に2~3花をつける。小包葉は倒卵状長楕円(ちょうだえん)形で膜質。小花柄はほとんどない。花は紫点があり、径約10センチメートル、花筒は長さ2.5センチメートル。外花被片(かひへん)は倒卵形で、中央部から以下は内面紫斑(しはん)のある鶏冠状の白色肉質突起を密生する。内花被片はほぼ同大で斜めに開く。白花と斑入葉(ふいりは)種がある。耐寒性、耐乾性ともに強く、地表あるいは浅土中に細い多数の地下茎を伸ばして繁殖する。昔は藁葺(わらぶ)き屋根に植えた。日なたでも半日陰でも育つが、半日陰で美しい。

[吉江清朗 2019年5月21日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イチハツ」の意味・わかりやすい解説

イチハツ(鳶尾)
イチハツ
Iris tectorum

アヤメ科の多年草。中国原産で,日本には古くから渡来した。観賞用に水はけのよいところなどに植えられ,また,しばしば農家のわらぶき屋根の上に植えられた。葉は幅広く3~4cmになり,先端は剣状で脈が多少隆起する。淡緑色で光沢がある。花はアヤメより早く5月に咲く。イチハツの名は,この類のものとして最初に咲くことからつけられたという。花の直径は 10cmぐらい,3枚の外花被片は広い円形で紫色に濃色の斑点がある。また中央の基部のほうに白色の鶏冠状の突起があるのが特徴,内花被片も卵形に広がり基部は細まる。花の色は紫色であるが,白花のシロバナイチハツもある。根茎を乾かしたものが生薬の鳶尾根で,吐剤または下剤として用いられる。

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