イトミミズ(読み)いとみみず

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イトミミズ」の意味・わかりやすい解説

イトミミズ
いとみみず / 糸蚯蚓

環形動物門貧毛綱イトミミズ科の水生ミミズ総称、および同科に属する1種名。種名のイトミミズTubifex tubifexは、体は細長く70~100ミリメートル、刺激を与えるとこの体を螺旋(らせん)状に巻く性質がある。体節数は85~100個、成熟個体では環帯が発達する。剛毛束は背面と腹面に生じ、それぞれ2列に列生する。下水など有機質の多い汚水に生息し、体の前半を泥中に残し、後半を水中に出してこれを揺り動かすため、群生するときには泥の表面が真っ赤にみえる。これを俗にモモホオズキとかユリノハナとよぶ。学名は久しい間T. hattaiが用いられてきたが、現在では世界に広く分布するT. tubifex同種とみなされている。イトミミズ科としては世界に約150種、日本からはイトミミズのほか、ユリミミズ(別名ゴトウイトミミズ)、シロイトミミズエラミミズなど10種ほど知られている。

大野正男


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イトミミズ」の意味・わかりやすい解説

イトミミズ
Tubifex hattai

環形動物門貧毛綱イトミミズ科。体長8~10cm,体節数 85~100。体は淡紅色で,糸状。おのおのの体節の,背側からは細長い針状剛毛と短い鉤状剛毛が,腹側からは鉤状剛毛が出ている。環帯は第 11体節と第 12体節の前半にできる。また体に触れると螺旋形に巻く性質がある。日本全国の下水溝などの泥の中にすみ,尾を水中に出して揺り動かしている。このため泥の表面が桃色になるのでモモホオズキとも呼ばれるが,ほかにボッタともいわれる。キンギョなどの餌に用いられるが,イトミミズとして市販されているもののなかにはユリミミズ,シロイトミミズ Rhizodrilus limosusなど数種が混っていることもある。なお,イトミミズ科 Tubificidaeに属する他種のものは,本種と異なり針状剛毛をもたない。

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