日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワタケ」の意味・わかりやすい解説
イワタケ
いわたけ / 岩茸
[学] Gyrophora esculenta Miyoshi
地衣類イワタケ科の1種。日本産地衣類の代表的なものに数えられる。日本全国の山地の岩場にある露出した岩石(おもに花崗岩(かこうがん)、珪岩(けいがん)など)の上に生える。地衣体は平らな葉状体で、直径5~10センチメートル(まれに30センチメートルのものもある)の円形に広がる。葉状体の表面は乾くと褐色で滑らかであるが、湿ると暗緑色となる。縁のほうは多少切れ込みがあり、波状にやや縮れることが多い。葉状体の裏側は一様に黒色で、中央に突出した臍状体(さいじょうたい)をもち、これで岩につく。子器はごくまれにつき、盤状で、表面には渦巻状の模様がある。
イワタケは食料として酢の物、てんぷら、汁の実などに利用される。このためイワタケの有名な産地(埼玉県秩父(ちちぶ)地方、愛媛県面河渓(おもごけい)周辺など)では、切り立った岩場でイワタケとりをする専門家がいて、とったものは乾燥され山菜として市販されている。イワタケを食料として利用することは古くから行われており江戸時代の本草書にもよく出てくる。イワタケ属は世界中で約50種、日本では18種ほどが知られているが、食料として利用されるのはイワタケだけである。このほかの種には、本州の高山帯に多いミヤマコゲノリUmbilicaria torrefacta、山地の川岸の岩上に生えるカワイワタケDermatocarpon miniatumなどがある。
[佐藤正己]