改訂新版 世界大百科事典 「イワナンテン」の意味・わかりやすい解説
イワナンテン (岩南天)
Leucothoe keiskei Miq.
山地の日陰の崖に生えるツツジ科の常緑低木。枝を下垂して筒形の白い花を咲かせる。和名は,岩場に生え葉が南天を思わせることに由来する。木質の茎はまばらに分枝して長さ30~100cm。葉は互生し,卵形で先はとがり,まばらに鋸歯があり,長さ5~9cm,幅1.5~3cm,革質で光沢がある。夏,前年の枝の葉のわきから総状花序を伸ばし,下垂する数個の花をつける。花は長さ2cmほどで中に10本のおしべがある。葯の先には4本のとげ状突起があり,虫の体に触れて花粉を散りやすくしている。開花後,しだいに花梗が曲がって果実は上向きにつく。果実はやや扁平な球形で,各室の背面で5裂し,多数の種子をだす。関東,中部,近畿の太平洋側にのみ見られる。同じ属のハナヒリノキ類とは形が著しく異なり,中国西部に近縁種が1種あるだけの珍しい植物で,ときに観賞用に栽植される。
執筆者:山崎 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報