翻訳|English horn
オーボエより5度低いヘ調の移調楽器。コーラングレcor anglaisともいう。名称はいずれも,18世紀中ごろにイギリスで用いられていた狩猟用のホルンに形が似ているからといわれるが,フランス語のanglaisはanglé(曲がった)あるいはangulaire(角度のある)がなまったものという説もあって,正確な語源はわかっていない。オーボエと同じダブル・リードの円錐管で,1.043mの長さを持ち,音に含みを持たせるために球根形のベルを持っている。この形の起りは,ルイ14世時代にさかのぼるといわれ,当時の軍楽隊などの新しいオーボエ・バンドで,中音域(低音域はファゴット)を埋めるために用いられたテナー・オーボエの内部が球根形にくりぬかれて,オーボエとファゴットの中間的音色を得たことが今日につながるものとみられる。ベルリオーズやワーグナー等によってその音質が生かされはじめたといってよく,オーボエの改良につれて機械的にも進歩をみせ,現在ではオーボエと同じシステムを持っている。独奏楽器ではないが,オーケストラの中で美しくきかれるソロとしては,ベルリオーズの《ローマの謝肉祭》序曲,《幻想交響曲》の第3楽章,ロッシーニの《ウィリアム・テル》序曲,ドボルジャークの交響曲《新世界から》第2楽章,シベリウスの《トゥオネラの白鳥》等は有名である。
→オーボエ
執筆者:北爪 利世
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管楽器。オーボエより完全5度低いヘ調の移調楽器。コーラングレとも。発音原理や奏法はオーボエと等しいが、形態はやや大きく、吸い込み管が屈折し、朝顔が球状であるところに特徴がある。この楽器の前身である18世紀のオーボエ・ダ・カッチャ(狩りのオーボエ)は形態的にコール・ダ・カッチャ(狩りのホルン)と似ており、その点でイングリッシュ・ホルンの語義「イギリスのホルン」の由来を示唆するが、直接イギリスと関係があるかどうかはまだ明らかではない。18世紀には半円形の曲管を示し、徐々に「く」の字形に移行して、1839年には直管のイングリッシュ・ホルンをブロが発明して今日に至っている。シベリウスの交響詩『トゥオネラの白鳥』、ドボルザークの交響曲第9番『新世界より』などで効果的に用いられている。
[中川 真]
「コーラングレ」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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