オーボエ(その他表記)oboe

翻訳|oboe

デジタル大辞泉 「オーボエ」の意味・読み・例文・類語

オーボエ(〈イタリア〉oboe)

木管楽器の一。リードを2枚もつ縦笛。歌うような旋律に適し、合奏では高音部を受け持つ。オーボー

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精選版 日本国語大辞典 「オーボエ」の意味・読み・例文・類語

オーボエ

  1. 〘 名詞 〙 ( [イタリア語] oboe ) オーボエ属の木管楽器の一つ。ダブル‐リードを持ち、管弦楽、室内楽の旋律楽器として重要な楽器。音律が安定しているところから合奏のときの基準音となる。オーボー。
    1. [初出の実例]「軍隊の中にて、ヲボウ 笛類 を吹く人なりし」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「オーボエ」の意味・わかりやすい解説

オーボエ
oboe

ダブル・リード(複簧)の円錐管木管楽器。オーボー,オーボアともいう。フランス語のオー(高い)とボア(木)に由来し,高音の木管楽器を意味する。民族音楽等に関しては,ダブル・リード楽器の総称として用いることがある。ダブル・リードの木管楽器は古くから世界に数多く分布しており,ギリシア・ローマ時代のアウロス,北アフリカのガイタ,西アジアのスルナイチャルメラなどがある。これらは管の内部に装着されたリードに息を吹き込んで鳴らすか,リード全体を口の中に入れてしまうものがほとんどであった。17世紀中ごろにこれらの古代楽器の内径を細くして,リードを直接唇でくわえられるようにしたことが近代オーボエへの改良の手がかりとなり,柔軟な音質と奏法が得られるようになった。当時のパリの木管楽器製造者にオットテールHotteterre一族の名まえが残っているが,前述のような改良により,粗野であった音を室内演奏にも適するよう繊細化したものと考えられている。1800年代後半にパリ音楽院の教授とトリエベールTriébert父子の協力で種々改良が加えられ,これが今日コンセルバトアール型と呼ばれ広く用いられている。

 音域は変ロまたはロから3点トあるいはそれ以上で,2オクターブ半以上あるC管で記譜と実音が一致する。ひなびたチャルメラから甘美な歌う声のような音色まで幅広い表現力をもち,独奏よりも合奏の中での旋律楽器として重要である。フランス型(コンセルバトアール型)とドイツ型に大別され,キー・システムや管孔の設計,音色に多少の差異があるが,古典様式の音楽,ロマン派から現代音楽にまで多様な表現を生んでいる。例えばバッハの諸作品に,チャイコフスキー《白鳥の湖》の前奏曲に,シューベルトの《未完成交響曲》に美しい旋律を聞くことができる。

 オーボエ族の楽器に,短3度低いA管で,現在移調楽器として使われるオーボエ・ダモーレoboe d'amore,イングリッシュ・ホルンバリトン・オーボエ(オーボエの2倍の大きさで音域が1オクターブ低い),ソプラノ・オーボエ(短3度高いEs管),コントラバス・オーボエ(標準より1オクターブと5度低いF管),バッグパイプの一種ミュゼットmusette(標準より5度高いG管)があげられる。
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百科事典マイペディア 「オーボエ」の意味・わかりやすい解説

オーボエ

高音域の木管楽器。ダブル・リードがついた円錐(えんすい)管が特徴。ルネサンス時代に愛用されたダブル・リード属から発展したもので,バロック時代以降表現力の高い木管楽器として独奏・合奏に用いられ,管弦楽に常席を占める楽器となった。19世紀以降キーをふやすなど構造上の改良が行われた。独奏楽器としては,バロック時代の多くの作品のほかモーツァルトやR.シュトラウス協奏曲が広く知られる。第2次大戦後は名手ホリガーの登場もあり,そのレパートリーをさらに拡大している。この系統の楽器は東洋・西洋ともに多く,西洋のオーボエ属の楽器としてはほかにオーボエ・ダモーレイングリッシュ・ホルンなどがある。→サリュソホーンファゴットリード
→関連項目管楽器管弦楽ズルナスルナイピリ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オーボエ」の意味・わかりやすい解説

オーボエ
おーぼえ
oboe

円錐(えんすい)管の上端にダブルリードを取り付けた気鳴楽器の一種。語源はフランス語のhaut(高い)とbois(木)をあわせたhautbois(高音の木管楽器)であるとされ、この語は15世紀末から用いられた。いわゆるオーケストラのオーボエは、通常木製で管長約70センチメートル。リードは葦(あし)製で、奏者自身が製作くふうする。管長は一定で、リードの差込み加減だけで音高を微調整するので、木管楽器のなかでもっとも音律を変えにくく、合奏の際は他の楽器がオーボエにあわせる。移調楽器ではなく、基音はC4、つまりC管で記譜と実音が一致する。音域はB♭3からG6。指で管孔を開閉するキー装置は、初期には2、3にすぎなかったが、19世紀に現在の原型が整えられた。オーボエの前身楽器としては、12世紀に近東からヨーロッパに入り、ルネサンス期を通じて発達したショームshawmがあげられる。そのなかで比較的高音のものが17世紀ごろオーボアとよばれるようになり、これに対してのちにつくられた低音のもの(grobois)は、コーラングレやファゴットなどの先祖となった。オーボエは初期の16、17世紀には舞踊の伴奏に用いられていたが、その後、音の持続性や鋭いが深みのある音色が買われて、オペラや室内楽、オーケストラなどで重要な地位を占める楽器となった。

 オーボエは広義にはダブルリードの木管楽器の総称として用いられ、そこにはヨーロッパのオーボエの前身だけでなく、世界に古くからあるさまざまなショームも含まれる。古代ギリシアのアウロスを筆頭に、トルコのズルナ、インドのシャーナーイチベットのリャリン、ソルナー、中国のソーナー(嗩吶)、タイのピー・ナイ、東アジアの篳篥(ひちりき)、チャルメラなどがある。これらは歴史的に関連性をもっており、たいていアンサンブルのなかで主旋律を受け持つ主要楽器となっている。

[川口明子]


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音楽用語ダス 「オーボエ」の解説

オーボエ[oboe / ob]

オーボエは、ダブル・リード、円錐管の管楽器で、フランス語のhaut(高い、音が大きい)とbois(木)、つまり、“高音の(音が大きい)木管楽器”が語源だといわれる。17世紀中頃に、ショームから今日のオーボエに直接つながるタイプのオーボエが登場したと考えられている。最初期には、キーが3つ(1700年頃には2つに減る)だけだったが、19世紀はじめ頃から、派生音の演奏を容易にするためにキーが追加されていき、現在では16または13個のキーを備えるようになった。2オクターブ半を越える音域で、やや鋭いが、牧歌的で哀愁を帯びた音色をもち、田園的な音楽には欠くことができない。ピッチの調整はあまりできないため、オーケストラなどの音合わせでは、オーボエを基準に他の楽器が合わせることになる。18世紀前半には、オーボエは、大規模な声楽作品やいろいろな器楽作品の中で、幅広く用いられるようになった。ビバルディ、テレマン、ヘンデルらの協奏曲、ソナタ、室内楽が多く書かれた。バッハの受難曲やカンタータにも、同族楽器であるオーボエ・ダモーレや、オーボエ・ダ・カッチャを含めれば、ほとんどの曲でオーボエが効果的に使われている。18世紀後半には、ホルンとともに最初にオーケストラの管楽器セクションに定席をもった。この頃の作品では、モーツァルトの協奏曲(K.314)や四重奏曲(K.370)が重要である。19世紀には、協奏曲は減るが、ベートーベン、シューベルト、ブラームス、ブルックナー、マーラーなどの交響曲や、ウェーバー、ベルリオーズ、ベルディ、ワーグナーらのオペラの中で活躍している。たとえば、ブラームスの「交響曲第2番」の第3楽章では、田園的な素朴な旋律をオーボエが歌い、ワーグナーの「ローエングリン」では、乙女エルザの登場を表す。今世紀に入ると、オーボエのための協奏曲(R.シュトラウス、ボーン・ウィリアムズなど)やオーボエを含んだ構成の室内楽も再び多く書かれるようになっている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オーボエ」の意味・わかりやすい解説

オーボエ
oboe

管楽器の一種。ダブル・リードの木管楽器。管長約 70cmで,円錐管。今日のオーケストラでは木管楽器群の重要楽器で,高音部を受持つ。ダブル・リードの楽器は全世界に古くから存在するが,直接の前身はショーム,シャルマイ,シャリュモーであるとされている。 17~18世紀頃今日のオーボエの原型が作られ,19世紀にキーメカニズムが完成された。フランス式とドイツ式があり,特にフランスのコンセルバトアール式が一般的。

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世界大百科事典(旧版)内のオーボエの言及

【管楽器】より

…管の中の空気(空気柱)に外部から気流(ふつうは奏者の呼気)を作用させて楽音を作る楽器の総称。気流の作用を受ける方式には,(1)管壁に小孔をあけ,側縁に気流を当てる(フルート),(2)管の入口に振動体をしかける(オーボエ,クラリネット),(3)管の入口に唇を当て,振動体として機能させる(トランペット)がある。(2)の場合の振動体は,適当な弾力のあるリードと呼ばれる薄片で,シングル・リード,ダブル・リードなどの別がある。…

※「オーボエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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