翻訳|oboe
ダブル・リード(複簧)の円錐管木管楽器。オーボー,オーボアともいう。フランス語のオー(高い)とボア(木)に由来し,高音の木管楽器を意味する。民族音楽等に関しては,ダブル・リード楽器の総称として用いることがある。ダブル・リードの木管楽器は古くから世界に数多く分布しており,ギリシア・ローマ時代のアウロス,北アフリカのガイタ,西アジアのスルナイ,チャルメラなどがある。これらは管の内部に装着されたリードに息を吹き込んで鳴らすか,リード全体を口の中に入れてしまうものがほとんどであった。17世紀中ごろにこれらの古代楽器の内径を細くして,リードを直接唇でくわえられるようにしたことが近代オーボエへの改良の手がかりとなり,柔軟な音質と奏法が得られるようになった。当時のパリの木管楽器製造者にオットテールHotteterre一族の名まえが残っているが,前述のような改良により,粗野であった音を室内演奏にも適するよう繊細化したものと考えられている。1800年代後半にパリ音楽院の教授とトリエベールTriébert父子の協力で種々改良が加えられ,これが今日コンセルバトアール型と呼ばれ広く用いられている。
音域は変ロまたはロから3点トあるいはそれ以上で,2オクターブ半以上あるC管で記譜と実音が一致する。ひなびたチャルメラから甘美な歌う声のような音色まで幅広い表現力をもち,独奏よりも合奏の中での旋律楽器として重要である。フランス型(コンセルバトアール型)とドイツ型に大別され,キー・システムや管孔の設計,音色に多少の差異があるが,古典様式の音楽,ロマン派から現代音楽にまで多様な表現を生んでいる。例えばバッハの諸作品に,チャイコフスキー《白鳥の湖》の前奏曲に,シューベルトの《未完成交響曲》に美しい旋律を聞くことができる。
オーボエ族の楽器に,短3度低いA管で,現在移調楽器として使われるオーボエ・ダモーレoboe d'amore,イングリッシュ・ホルン,バリトン・オーボエ(オーボエの2倍の大きさで音域が1オクターブ低い),ソプラノ・オーボエ(短3度高いEs管),コントラバス・オーボエ(標準より1オクターブと5度低いF管),バッグパイプの一種ミュゼットmusette(標準より5度高いG管)があげられる。
執筆者:北爪 利世
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円錐(えんすい)管の上端にダブルリードを取り付けた気鳴楽器の一種。語源はフランス語のhaut(高い)とbois(木)をあわせたhautbois(高音の木管楽器)であるとされ、この語は15世紀末から用いられた。いわゆるオーケストラのオーボエは、通常木製で管長約70センチメートル。リードは葦(あし)製で、奏者自身が製作くふうする。管長は一定で、リードの差込み加減だけで音高を微調整するので、木管楽器のなかでもっとも音律を変えにくく、合奏の際は他の楽器がオーボエにあわせる。移調楽器ではなく、基音はC4、つまりC管で記譜と実音が一致する。音域はB♭3からG6。指で管孔を開閉するキー装置は、初期には2、3にすぎなかったが、19世紀に現在の原型が整えられた。オーボエの前身楽器としては、12世紀に近東からヨーロッパに入り、ルネサンス期を通じて発達したショームshawmがあげられる。そのなかで比較的高音のものが17世紀ごろオーボアとよばれるようになり、これに対してのちにつくられた低音のもの(grobois)は、コーラングレやファゴットなどの先祖となった。オーボエは初期の16、17世紀には舞踊の伴奏に用いられていたが、その後、音の持続性や鋭いが深みのある音色が買われて、オペラや室内楽、オーケストラなどで重要な地位を占める楽器となった。
オーボエは広義にはダブルリードの木管楽器の総称として用いられ、そこにはヨーロッパのオーボエの前身だけでなく、世界に古くからあるさまざまなショームも含まれる。古代ギリシアのアウロスを筆頭に、トルコのズルナ、インドのシャーナーイ、チベットのリャリン、ソルナー、中国のソーナー(嗩吶)、タイのピー・ナイ、東アジアの篳篥(ひちりき)、チャルメラなどがある。これらは歴史的に関連性をもっており、たいていアンサンブルのなかで主旋律を受け持つ主要楽器となっている。
[川口明子]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…管の中の空気(空気柱)に外部から気流(ふつうは奏者の呼気)を作用させて楽音を作る楽器の総称。気流の作用を受ける方式には,(1)管壁に小孔をあけ,側縁に気流を当てる(フルート),(2)管の入口に振動体をしかける(オーボエ,クラリネット),(3)管の入口に唇を当て,振動体として機能させる(トランペット)がある。(2)の場合の振動体は,適当な弾力のあるリードと呼ばれる薄片で,シングル・リード,ダブル・リードなどの別がある。…
※「オーボエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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