L.H.ベルリオーズが作曲した五つの交響的作品のうちの最初のもので,代表作とされている。作品14a。1830年作曲,同年12月5日にパリ音楽院においてアブネックFrançois Antoine Habeneck(1781-1849)の指揮で初演された。〈ある芸術家の生活のエピソード〉という副題をもち,五つの楽章のそれぞれに〈夢,情熱〉〈舞踏会〉〈野辺の風景〉〈断頭台への行進〉〈魔女の宴の夢--魔女のロンド〉のタイトルが与えられている。恋人を殺した罪で処刑された男(芸術家)が自分の葬式に集まった魔女たちの踊りを眺める--この奇怪な幻想は,彼の,片恋(女優ハリエット・スミッソンへの)の苦悩から生まれたといわれる。マーラーやR.シュトラウスの作品に代表されるように,19世紀後半には標題音楽的な,あるいはテキストを伴った交響曲の作曲が定着するが,ベルリオーズのこの作品は時代を先取りしたきわめて大胆な試みであった。
執筆者:後藤 暢子
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フランスのベルリオーズが作曲した交響曲ハ長調(作品14のa)。1830年パリ初演。この作品は、絶対音楽の代表的形式である「交響曲」に「標題音楽」の要素を徹底して取り入れた例として、西洋音楽史に特別の位置を占めている。「1人の芸術家の生涯のエピソード」Episode de la vie d'une artisteという副題をもち、作曲者の、イギリスのシェークスピア劇団の女優ハリエット・スミスソンへの熱烈な思慕が作品誕生の原動力となっている。失恋した芸術家の阿片(アヘン)による幻想を描写した音楽で、五つの楽章は(1)夢、情熱、(2)舞踏会、(3)野の風景、(4)断頭台への行進、(5)魔女の夜宴の夢―魔女のロンド、という標題をもっている。音楽構成上の特徴としては、恋人を表す固定楽想idée fixeを全楽章に使用して作品の統一性を図っていることと、オーケストラの表現領域を飛躍的に拡大した多彩な管弦楽法とがあげられる。
[三宅幸夫]
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…シューマンは第1番《春》(1841)や第3番《ライン》(1850),第4番(1841,改作1851)などで,ピアノ的な発想と語法を背景として,文学的契機を暗示しながらも純音楽的な動機による統一的造形を打ち出している。 一方,19世紀における標題音楽の概念にとって画期的存在となったのは,フランスのベルリオーズの《幻想交響曲》(1830)である。この革命的な作品では,特定の人物を表し物語の筋に従って全5楽章に頻出する同一の旋律(固定楽想)が形式上・内容上の統一性を保証し,また和声法や管弦楽法においても大胆な実験が試みられている。…
…在学中にシェークスピア,ベートーベン,ゲーテを知って衝撃を受けた。28年にローマ賞の2等賞,さらに30年にはローマ大賞を受け,同年彼の初期の傑作である《幻想交響曲》を発表した。イタリア留学(1831‐32)から戻ると,彼はイギリス人の女優ハリエット・スミッソン(ベルリオーズがシェークスピア劇と出会ったときオフィーリアを演じていた)と結婚し,ひとり息子ルイが誕生した。…
…最初に交響曲のバレエ化を手がけた振付師の一人でもある。代表作にロッシーニの音楽による《奇妙な店》(1919),ファリャ作曲の《三角帽子》(1919),ベルリオーズ作曲の《幻想交響曲》(1936),オッフェンバックの音楽による《パリの賑い(喜び)》(1938)などがあり,映画《赤い靴》(1948),《ホフマン物語》(1951),《ナポリの饗宴》(1954)の振付を行い,みずから出演している。自伝(1960)がある。…
※「幻想交響曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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