日本大百科全書(ニッポニカ) 「インドネシア料理」の意味・わかりやすい解説
インドネシア料理
いんどねしありょうり
大小の多くの島々から成り立ち、多種族、多宗教、多習俗をもった約2億の人口を抱えるインドネシアには、食物の種類も多種多様にある。主食は米飯だが、赤道にまたがった熱帯に位置し、国の東西の延長は非常に長い距離があるので、料理の味は一様ではない。辛味好みのスマトラ人、甘い料理の好きなジャワ人、酸味のきいた料理を好むパレンバンおよびジャカルタの人など、料理の味は地方によって異なる。インドネシアに多いイスラム教徒は豚肉を食べないが、そのかわりにヤギの肉が好まれている。暑い気候のなかで健康を保つためには、新鮮な野菜もよく使われる。
料理は、牛肉、ヤギ肉、豚肉、鶏肉や、海水魚、淡水魚などの主材料を、ココナッツミルクといろいろなスパイスで味つけして、焼いたり揚げたりするものが多い。そのほか、市民の食事に欠かせないのは、ダイズからつくるタフ(豆腐)やテンペ(ダイズを煮て、発酵させた納豆に似たもの)で、これらは各種の料理に用いられている。
多種多様なインドネシア料理のなかで代表的なものは、ナシ・ゴレン、ガドガド、サテ、クルプックで、辛い調味食品であるサンバルも欠かせない熱帯の味である。これらの料理は広くインドネシアの人々に好まれるだけでなく、この国に住む外国人にも好評である。
ナシ・ゴレンは、ご飯、卵、小さく切った鶏肉、小エビなどにスパイスを混ぜて炒(いた)めた焼き飯で、これにサラダとクルプックを並べて盛り付け、いっしょに食べるのが普通である。
ガドガドは、インドネシアのサラダのこと。ダイズもやしやキャベツなどゆでた野菜に厚揚げ豆腐を混ぜて、ピーナッツソースにいろいろのスパイスを加えたドレッシングをかけて食べる。さっぱりした味で甘辛く、昼食にふさわしい料理である。
サテは、どんな種類の肉でもいいが、肉を小さく切って串(くし)に刺し、日本の焼きとりのように炭火で焼く。熱いうちにトウガラシ、紫タマネギ、ピーナッツバター、しょうゆのたれをかけて食べる。これは味も香りもよく、食欲をそそる肉料理である。
クルプックは、小エビに小麦粉またはキャッサバ粉を混ぜて固めて干したもの。形は薄く手のひらくらいで、サラダ油で揚げると膨らんで大きくなる。
食事のたびにかならずといっていいくらいテーブルに出されるサンバルは、なまの赤トウガラシ、トマト、塩にいろいろの香料をすりつぶしてつくる。いわば辛い薬味だが、この辛さがとても食欲をそそるので、多くの料理に添えて食べる。
インドネシアの菓子は、つねに、糯米(もちごめ)や米、ヤシの実やヤシの砂糖からつくられる。これは、インドネシアが農産物の豊かな国であることを物語っている。現在は西欧の影響で、この国にもヨーロッパの食物が入り、とくにジャカルタのような大都市ではそれが日常食となっている。
[スチアティ・S・アキシオマ]