インパチエンスといえばツリフネソウ科のツリフネソウ属を指すが,園芸界ではアフリカホウセンカの呼名となっている。アフリカホウセンカI.sultani Hook.f.は花色も豊富に改良され,年間を通じて開花するので,鉢植えや花壇で楽しめる。原産地はザンジバル。現地では30~60cmになる多年草であるが,改良種には矮性種もあり,花色も橙,紅,白,ピンク,紫紅などがあり,斑入りの花や葉もある。草丈は30~50cm,茎は多肉質で節はふくれ,よく分枝して長い距のあるやや不整形の5弁花を平開する。花の中心に短いおしべとめしべがあり,果実は紡錘形で,種子が熟せばふれると果皮が裂開して飛び散るので,ラテン語のimpatiens(がまんしないの意)の属名がある。ふつうは種をまいて育てる。4~5月にまけば6~7月から晩秋まで開花するが,直射日光をさけるほうが生育がよい。20~25℃あれば挿芽でよく根づくので,繁殖するのはたやすい。
ツリフネソウ属Impatiensは熱帯から温帯域まで広く分布していて,約500種が知られている。園芸的には未開発のものの一つで,多様な変化に富み,花の美しいものが多い。
執筆者:浅山 英一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ツリフネソウ科(APG分類:ツリフネソウ科)の多年草であるが、園芸上は一年草として扱う。南アフリカ原産。和名アフリカホウセンカ。最近は品種改良が進み、一代交雑種の矮性(わいせい)多花の栽培しやすいものが多く利用される。夏花壇、吊(つ)り鉢、プランター植えなどによく、半日陰にも育ち、樹陰でもよく開花する観賞価値の高い植物である。花色も豊富で、赤、桃、橙(だいだい)、赤紫、白やそれらの白覆輪咲きなど非常に多彩で、八重咲きや葉に白斑(ふ)入りのものなどもある。近年ニューギニア・インパチエンスNew Guinea hybr.といわれる大輪系の新種が開発され、銅葉、白黄斑葉など複雑な覆色葉をもつ大形品種があり、ほとんどの品種に植物特許がついていて自家増殖が禁じられている。栽培は実生(みしょう)、挿芽も容易で、実生は20~25℃でよく発芽する。発芽後は軽く日よけをして育苗し、徐々に日当りを強くしながら育てる。生育適温は20℃内外である。ニューギニア系、八重咲き系は挿芽で繁殖する。川砂などに挿芽をし、20~25℃で約2週間後に発根する。移植後は日よけをし、活着をよくする。生育が旺盛(おうせい)で水を好むため灌水(かんすい)は十分にする。根詰まりをおこしやすいので早めの植え替えをし、追肥を施すと長期間花を咲かせることができる。
[金子勝巳 2021年3月22日]
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…山間の湿地に生えるツリフネソウ科の一年草(イラスト)。花は舟形で花柄の先にぶら下がって咲き,熟した果実はふれると急にはじけて種子を飛ばす。属名のImpatiensは〈がまんできない〉という意味。日本全国のほか朝鮮や中国東北部にも分布する。茎は高さ50~80cm,よく分枝し,節はふくれる。葉は互生し,葉柄は長さ1~4.5cm,葉身は卵形で長さ6~14cm,円鋸歯がある。花序は総状,上部の葉腋(ようえき)から出,太い腺毛が目だつ。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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