日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィンダム」の意味・わかりやすい解説
ウィンダム
うぃんだむ
John Windham
(1903―1966)
イギリスのSF作家。終始一貫してSFの重要なジャンルの一つである破滅テーマに取り組む。これは天変地異や原水爆戦争、あるいは異星人の侵略によって地球と人類が絶滅の危機に瀕(ひん)するという未来の悲劇的情況を予測するものだが、彼は人類が永遠に繁栄を約束された生物ではないという冷静な史観を格調のある文体で描いた。1931年からSFの発表を始めたが、その文名を一躍高からしめた作品は、盲目となった人類のパニックを描く『トリフィド時代』(1951)である。その後、『海竜めざめる』(1953)ではカリブ海の島を潰滅(かいめつ)させる深海生物を、絶筆となった『ユートピアの罠(わな)』(1979)では放射能を浴びて異常進化した毒グモの群れを描いたが、『さなぎ』(1955)や『宇宙知性チョッキー』(1963)では、テレパシー能力を備えた新人類の誕生を取り上げている。
[厚木 淳]
『峯岸久訳『ユートピアの罠』(創元推理文庫)』