ウェストミッドランズ(読み)うぇすとみっどらんず(英語表記)West Midlands

翻訳|West Midlands

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウェストミッドランズ」の意味・わかりやすい解説

ウェストミッドランズ
West Midlands

イギリスイングランド中部の地域名。ウォールソールウルバーハンプトンコベントリーサンドウェルソーリハルダッドリーバーミンガムの 7地区からなる。中心都市バーミンガム。1974年の行政改革により,それまでのスタッフォードシャー県,ウースターシャー県,ウォリックシャー県の各一部をもって特別県として新設されたが,1986年に廃止され行政機能は失った。北のペナイン山脈と南のコッツウォールド丘陵に挟まれた低地のほぼ中央,バーミンガム周辺の丘陵地帯を中心とした地域で,新赤色砂岩,粘土などからなり,その下層に夾炭層(→炭層)が発達。内陸の密林地帯であったため,イングランドのほかの地域に比べて集落の発達は遅れたが,中世以降バーミンガム,ダッドリー,コベントリーなどの町が除々に発展した。この地域の伝統産業である金属工業は 16世紀にバーミンガムで始まり,18世紀までにはダッドリー,ウルバーハンプトン,ウォールソールなどで鉄冶金が盛んとなり,その後の技術革新と鉄道,運河などの交通網の発達に伴って,地元の豊かな鉄鉱石炭田を背景に製鉄地帯として発展。19世紀にはイギリス有数の工業地帯となり,工場廃棄物や煤煙などによる汚染が進んだことから「ブラックカントリー」と呼ばれるようになった。20世紀に入ると鉄鉱資源の枯渇石炭生産の減少により製鉄業は衰退したが,これに代わって金属工業が盛んとなり,ダッドリーのチェーン,ウルバーハンプトンの錠前と鍵,ウェストブロミッジスプリングや計量機械というように,各都市はその特産品で知られるようになった。このような工業発展はコベントリーの例に典型的にみられ,その時代の全般的な経済状態に応じて,主産業は中世の毛織物工業から,17世紀にはリボンと時計の製造,19世紀に入ると自転車製造などへと変わり,今日では自動車や電機,航空機,化学繊維などの工業が主要となっている。バーミンガムとコベントリーの中間にはイギリス最大の見本市会場ナショナル・エキシビション・センター(1976)がある。グレーターロンドンを除くと最も人口稠密な地域で,名実ともにイギリスを代表する工業地域である。面積 898km2。人口 259万1300(2005推計)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェストミッドランズ」の意味・わかりやすい解説

ウェスト・ミッドランズ
うぇすとみっどらんず
West Midlands

イギリス、イングランド中部のメトロポリタン・カウンティ(大都市県)。面積899平方キロメートル、人口255万5596(2001)。バーミンガム、コベントリー、ダドリーなどの重要な工業都市がそのなかに含まれ、ブラック・カントリーの中枢を占めている。居住の歴史はローマ時代に始まり、16世紀以降は金属細工、18世紀以降は製鉄業がおこったが、豊富な石炭と鉄鉱石の埋蔵に恵まれ、19世紀にはイギリス第一の工業地帯となった。1986年、保守党政権により自治体機能は廃止されたが行政区名称としては存続している。

井内 昇]

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