日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラック・カントリー」の意味・わかりやすい解説
ブラック・カントリー
ぶらっくかんとりー
Black Country
イギリス、イングランド中部の工業地帯。バーミンガムの北郊から西郊にかけて連なる一続きの都市化・工業化地域の呼称で、ウェスト・ミッドランズ県に含まれる。「黒郷」と訳される。中心都市バーミンガムのほか、ウルバーハンプトン、ダドリーDudley(19万5900)、ウォルソル、ウェスト・ブロミッジWest Bromwich(14万5000)、ヘイルゾウエンHalesowen(5万8600)、スタウアブリッジStourbridge(5万6300)が主要都市(括弧(かっこ)内は人口、2002推計)。中世以来、金物や武器の製造地であったが、産業革命期に地元産出の石炭、鉄鉱、石灰、耐火粘土を原料に、製鉄業を中核とする鉄鋼・金属・機械工業地帯に変貌(へんぼう)した。工場の煙突から排出される黒煙が立ちこめ、「黒郷」の名でよばれるようになった。しかし1900年ごろから鉄鉱石が枯渇し、産炭量も減ったため製鉄業は衰微し、かわって蓄積した高い技術を生かせる多種多様な金属加工、輸送機械、家庭用電気器具などの工業が盛んになった。
[久保田武]