日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェルティ」の意味・わかりやすい解説
ウェルティ
うぇるてぃ
Eudora Welty
(1909―2001)
アメリカの女流小説家。ミシシッピ州ジャクソンに生まれる。コロンビア大学で広告学を学んだのち、故郷に帰り、以来、同地に住む。作品の多くは、同州ナッチェスからテネシー州ナッシュビルに至るナッチェス旧道を舞台とし、南部の過去と現在を描いて地域作家といわれ、フォークナーと比較される。1936年に最初の短編『セールスマンの死』を発表して賞賛され、短編作家として出発した。初期の短編は幻想的雰囲気を有するものが多い。おもな長編には『デルタの結婚式』(1946)、ハウェルズ賞牌(しょうはい)受賞作『ポンダー家の心情』(1954)、『負けいくさ』(1970)、ピュリッツァー賞受賞作『楽天家の娘』(1972)がある。日常のささやかなできごとのなかに人間生活の神秘をとらえ、人間関係を回復する愛の力を陰影に富む文章で描く。71年には、自身で撮影した30年代のミシシッピ写真集が、80年には、短編全集1巻が出版された。
[武田千枝子]
『ロバート・ペン・ウォレン著、鈴木五十鈴訳『ユードラ・ウェルティにおける愛と孤独』(『現代アメリカ作家論』所収・1966・南雲堂)』▽『ユードラ・ウェルティ著、大杉博昭訳『ハーヴァード講演 一作家の生いたち』(1993・りん書房)』▽『吉岡葉子著『南部女性作家論――ウェルティとマッカラーズ』(1999・旺史社)』