ウォリンガー(読み)うぉりんがー(英語表記)Wilhelm Worringer

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウォリンガー」の意味・わかりやすい解説

ウォリンガー
Worringer, Robert Wilhelm

[生]1881.1.31. アーヘン
[没]1965.3.29. ミュンヘン
ドイツの美術史家。 1928年ケーニヒスベルク大学教授,46年ハレ大学教授。 52年から没年までミュンヘンに定住。博士論文『抽象感情移入』 Abstraktion und Einfühlung (1908) によって広く注目される。彼の思想は,A.リーグルの『様式の問題』 (1893) や『後期ローマの工芸』 (1901) で規定された「芸術意欲」 Kunstwollenの概念がその基礎づけとなっている。主要著書『ゴシックの形式問題』 Formproblem der Gotik (11) ,『中世ドイツの写本挿絵』 Altdeutsche Buchillustration (12) ,『ドイツ木版画の起源』 Die Anfänge der Deutschen Tafelmalerei (24) ,『エジプト芸術』 Ägyptische Kunst (27) ,『ギリシア精神とゴシック』 Griechentum und Gotik (28) ,『現代芸術の問題点』 Problematik der Gegenwartskunst (48) ,『問いと反問』 Fragen und Gegenfragen (56) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォリンガー」の意味・わかりやすい解説

ウォリンガー
うぉりんがー
Wilhelm Worringer
(1881―1965)

ドイツの美術史学者。ケーニヒスベルク大学(現、イマヌエル・カント・バルト連邦大学)教授を務め、第二次世界大戦後は東ドイツのハレ大学に招かれたが、晩年はミュンヘンに居住、同地で没した。美術史学におけるいわゆるウィーン学派のリーグルを受け継ぎ、「芸術意欲」を基礎として美術史を精神史に関連づけようとした。主著『抽象と感情移入』(1908)にみるように、基本的な芸術類型に基づく方法を採用して研究を推し進め、古代エジプトや中世ゴシックの美術にも、西欧的・古典的な美術とは別な、感情移入説では説明できない独自の美があることを論証した。またその抽象芸術の位置づけは20世紀美術の理解にも意義をもっている。ほかに『ゴシック美術形式論』(1911)、『ギリシア精神とゴシック』(1928)、『現代芸術の形式問題』(1948)、『エジプトの芸術』(1924)などの著書がある。

鹿島 享]

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