日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミヒゴイ」の意味・わかりやすい解説
ウミヒゴイ
うみひごい / 海緋鯉
yellow striped goatfish
red mullet
[学] Parupeneus chrysopleuron
硬骨魚綱スズキ目ヒメジ科に属する海水魚。青森県、千葉県から九州南岸の太平洋沿岸、山口県、福岡県、天草(あまくさ)諸島などの日本海沿岸、南西諸島、小笠原(おがさわら)諸島、台湾、中国、フィリピン、アラフラ海、オーストラリア北西岸などの西太平洋、インド洋に分布する。東京ではウミゴイ、大阪、和歌山、高知ではメンドリ、沖縄ではフールヤーという。体は細長く側扁(そくへん)し、背びれの起部付近でもっとも高く、体高は体長のおよそ30~32%。頭の外郭は強く傾斜する。頭長はおよそ体高に等しい。口は小さく、上顎(じょうがく)の後端は目のはるか前方にあり、その後縁は丸い。上下両顎に1列の円錐歯(えんすいし)があるが、鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨に歯がない。口ひげは長くて、前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁付近に達する。鱗(うろこ)は大きく、側線鱗(そくせんりん)数は28~30枚。背びれはよく離れた2基で、8棘(きょく)9軟条。臀(しり)びれは7軟条で、前縁長は基底長より短い。体色は鮮赤色で、小さい個体には目の後ろから体の側面を通り、側線より上方の尾びれ基底に達する黄色縦帯がある。口ひげは白い。尾柄(びへい)に暗褐色の斑紋(はんもん)がない。やや深い岩礁域やサンゴ礁域の砂泥底にすむ。幼魚は水深10メートルくらいの砂底に小さい群れですむ。ヒメジ科の魚類中ではもっとも大きくなり、全長55センチメートルに達する。下顎のひげは、泳ぐときには下顎の溝に畳み込んでいるが、海底の餌(えさ)をあさるときにはひげを立てて激しく動かす。ひげには味を知る感覚細胞がある。おもに釣り、定置網、刺網(さしあみ)などで漁獲され、冬は美味である。白身魚で、煮つけ、焼き魚、刺身などにする。ウミヒゴイ属には日本からオキナヒメジ、オジサンなど13種が知られているが、本種は体側に明瞭(めいりょう)な斑紋がなく、口ひげが短く、鰓蓋の後縁下に達しないことなどで他種と区別できる。
[片山正夫・尼岡邦夫 2021年2月17日]