大学事典 「科学アカデミー」の解説
科学アカデミー
かがくアカデミー
大学が自然科学研究のための場ではなかった時代の西洋において,科学の研究発表や交流の場を提供していた組織。科学と技術の国家支援を奨励したフランシス・ベーコン,F.の思想が理念的原型となっている。15世紀半ば以降,西欧諸国で活発となった私的な研究会合(英語圏ではルネサンス・アカデミーとも呼ばれる)のうち,自然科学や数学を扱うものを国家が認定,もしくは直接支援することで制度化されたという側面もある。とくに1660年代に成立したイギリスのロイヤル・ソサエティ(イギリス)(王立協会)とフランスのパリ王立科学アカデミー(フランス)は,組織モデルの原型となった。前者は愛好者の共同体のような性質を保った水平的な組織であり,後者は選ばれた少数精鋭の会員の上に王侯貴族の庇護者を戴く垂直型の組織であった。この2種類を原型にして多様な形態のアカデミーが200ほど欧州各地に生まれたが,自然科学のみならず人文系諸分野を同時に扱う組織が多かった。19世紀以降,おもな科学研究の場は大学に移り,アカデミーは科学振興を役割とする存在となった。
著者: 隠岐さや香
参考文献: James E. McClellan Ⅲ, Science Reorganized: Scientific Societies in the Eighteenth Century, New York: Columbia University Press, 1985.
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報