アメリカの物理学者。核磁気共鳴吸収の研究で知られ、1952年ブロックとともにノーベル物理学賞を受賞した。イリノイ州に生まれる。インディアナのパーデュー大学で電気工学を修め、1933年に卒業。在学中から物理学に関心を抱き、電子回折の実験研究に参加、卒業後、ドイツのカールスルーエ工科大学に留学、帰国後の1938年ハーバード大学で学位を取得。ハーバード大学講師ののち、マサチューセッツ工科大学の輻射(ふくしゃ)研究所に入って、1940年から軍事研究、とりわけマイクロ波レーダーの開発計画に従い、新しい周波数帯やマイクロ波技術の開発に尽力した。第二次世界大戦終了直後、核磁気共鳴吸収を創案し、1946年、高周波を用いる方法で固体や液体の試料によって原子核の磁気モーメントを測定、以後この方法は核磁気共鳴を測定する一般的な方法となり、固体などの物性論的研究上、有力な手段となった。パーセルの研究は、核磁気共鳴に始まる核磁気学、とくに磁気緩和の問題とこれに関連した分子構造の諸問題へと発展、一方、原子諸定数の決定、低温における核磁気モーメントの研究もあり、電波天文学への貢献もある。1949年ハーバード大学教授、その後1960年にゲルハート・ゲイド大学の教授となり、1980年に退職。以後名誉教授となった。
[藤村 淳]
イギリスの作曲家。ロンドンに生まれたと推定される。10歳ごろ(1669/70)王室礼拝堂の少年聖歌隊の一員となり、ヨーロッパ大陸の音楽になじんだ。変声後、聖歌隊を退き、王室の楽器管理者の助手をつとめ、1674年、ウェストミンスター寺院のオルガン調律を受け持つかたわら通奏低音法について学び、また写譜の仕事を通じて、タリス、バード、ギボンズなどのイギリス・ルネサンス様式の音楽を研究した。77年わずか18歳で王室の管弦合奏隊の常任作曲家となり、79年からはウェストミンスター寺院のオルガン奏者に任命される。翌80年か81年にフランシスと結婚、以後82年からは王室礼拝堂のオルガン奏者も兼任、83年には王室の楽器管理者に任ぜられるなど職歴、作曲活動ともに充実するが、95年にわずか37歳でロンドンに没した。
当時のイギリスは1660年の王政復古を機として、イタリア、フランスの新しいバロック様式の音楽を取り入れるのにきわめて積極的であった。パーセル自身はイギリスの古いポリフォニー様式をも受け継ぎ、この両者の融合は83年出版の『三声のソナタ』などに示される。彼の作品群において重要な地位を占めるバース・アンセム(合唱、独唱、器楽による宗教音楽)の教会カンタータ的形式や晩年の劇作品における華麗なイタリア風の声楽部分が示す大陸的要素と、英語のテキストの抑揚およびその意味する内容に即した音楽書法を生み出すことにより、パーセルは大陸的技法と自国語である英語とを同化させることに成功した。
[南谷美保]
『J・A・ウェストラップ著、松本ミサオ訳『パーセル』(1989・音楽之友社)』
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17世紀後半のイギリスが生んだ最大の作曲家。とくに劇音楽を得意とした。日本では,イギリス現代作曲家ブリテンが作った《青少年のための管弦楽入門--パーセルの主題による変奏曲とフーガ》(1946)を通じて特にその名が知られているが,ブリテンが引用したのは,パーセルの劇的付随音楽《アブデラザール》の〈ロンド〉の主題である。
パーセルは音楽家の家系に生まれ,少年時代にチャールズ2世の王室礼拝堂少年聖歌隊に入って教育を受ける。やがてイギリスを代表する作曲家として王室音楽家の地位を歴任し,王室の公式行事のための作品を作曲したが,そのかたわらロンドン市民の劇場のために多数の付随音楽を作曲し,酒場の輪唱曲キャッチを作曲するなどして広く親しまれた。作品の中では,友人プリーストの経営する女子高等学校のために作った3幕もののオペラ《ダイドーとイーニアス》(1689)が,今日まで残る最初の本格的なイギリス・オペラとして高い評価を保っている。その他《アーサー王》《テンペスト》などを含む劇的付随音楽40曲以上,《聖セシリアの頌歌》ほかの宗教曲,2巻のトリオ・ソナタ集,《音楽の侍女》と題した鍵盤曲集などがある。
執筆者:服部 幸三
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…また歴史的に起伏の激しいこともその特徴で,黄金時代と呼べるような隆盛期がいくつかある一方,その間にほとんど空白に近い沈滞期が続くという極端な展開を示している。すなわち黄金時代としては,第1にダンスタブルJ.Dunstable(1390ころ‐1453)を中心とする中世からルネサンスへの転換期,第2にタリスT.Tallis(1505ころ‐85),W.バード,J.ダウランド,O.ギボンズらの手によって声楽,器楽の両分野において目覚ましい展開が見られたチューダー朝とそれに続くジェームズ1世時代,第3にパーセルを中心とする王政復古時代,そして第4にボーン・ウィリアムズからブリテンにいたる現代を挙げることができる。またこのほかに例外的なケースとして18世紀前半におけるヘンデルの活躍がある。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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