日本大百科全書(ニッポニカ) 「エルミタージュ美術館」の意味・わかりやすい解説
エルミタージュ美術館
えるみたーじゅびじゅつかん
Государственный Эрмитаж/Gosudarstvennïy Ermitazh
サンクト・ペテルブルグにあるロシア最大の国立美術館。現在のエルミタージュ(フランス語で隠れ家の意)は、エリザベータ女帝以来ロシア皇帝歴代の宮殿であった冬宮と、これに増築された小エルミタージュ、劇場、旧エルミタージュ(いずれも18世紀後半)、新エルミタージュ(1851)の五つの建物からなる。当代きっての収集家であったエカチェリーナ2世の時代に、すでに3926点の絵画が収集されており、これを核にコレクションが進められ、1917年のロシア革命後は、文化遺産の保護と国家への譲渡に関する法令により、収蔵品はますます増大した。現在の所蔵点数は約300万点といわれ、6部門(原始文化と美術、古代世界の文化と美術、東方諸国の文化と美術、ロシア文化、西欧美術、コイン・メダル)に分けて収蔵展示されている。まだ宮廷の管轄下にあった1852年から美術館として機能し始め、一部に公開。革命後は国有となって1920年から一般に公開されるようになった。膨大な所蔵品のうち、西欧美術のコレクションは、歴代皇帝によって集められたルネサンスから近世に至る名画に、シチューキン、モロゾフらの大コレクターによるフランス印象派・後期印象派の作品を加え、世界最大級の美術館としての面目を示している。なお、この美術館のあるサンクト・ペテルブルグ歴史地区は1990年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[湊 典子]
『ボリス・B・ピオトロフスキー著、加藤九祚・生田圓・青柳正規訳『エルミタージュ美術館』(1985・岩波書店)』▽『コリン・アイスラー著、高階秀爾監訳『エルミタージュ美術館の絵画』(1996・中央公論社)』