日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンジニアリング産業」の意味・わかりやすい解説
エンジニアリング産業
えんじにありんぐさんぎょう
工場、諸施設、設備等の建設をハード、ソフトの両面から担う基軸的な産業である。プラント建設についての事前調査、基本ないし詳細設計、資材調達、現地施工、完成後のオペレーション指導、維持管理などが主要な活動領域となる。欧米におけるエンジニアリング産業の形成は、19世紀末にまでさかのぼれるが、日本では、1950年代以降の石油精製業や石油化学工業の登場によって、その存立基盤が拡充しており、その後、重化学工業化とともに増大した工場建設、資源・エネルギー関連施設等巨大なプラント建設を担い急成長を遂げてきた。また、参入企業の増加があり、生産性の上昇を達成し、ノウハウを蓄積してきている。代表的専業企業とされる日揮(にっき)(1928年設立)、千代田化工建設(1948年設立)、東洋エンジニアリング(1961年設立)の3社が業界を主導してきているが、兼業とされる大手造船、重機メーカー、建設会社、総合商社のエンジニアリング部門等の参入が相次いでいる。高度経済成長期以降、国際的なエネルギー事情、産業基盤整備、関連産業の設備投資状況と連動して産業再編成を繰り返している。一般財団法人エンジニアリング協会によるアンケート統計調査によれば、2011年(平成23)の企業数は61社で受注総額は約14兆円、2012年の企業数は53社で受注総額は約13兆円となっている。対象工事の範囲が異なり配慮が必要であるが、2008年のリーマン・ショック以降、落ち込みをみせていた受注総額が、2011年には増加している。従業者数は、2011年は約30万人、2012年は26万7000人へと減少傾向にある。
プラント輸出の拡大や海外での石油精製、石油化学、天然ガス、発電プラント、原子力関連施設の建設に伴い海外事業が一定割合を占めている。新興国でのプラントの建設、とくに、LNG(液化天然ガス)、シェールガスを含むガス関連プラント等の建設は、増大傾向にあるが、国際的な政情不安は業績を縮小させている。先の専業3社は別であるが、業界の受注高全体に占める海外のウェイトは2割程度であり(2012)、シェア動向からして日本企業の国際競争力強化は今後の課題である。
人材育成を含めた国際的事業、病院やデータセンター等付加価値を有する建設構築物、産業廃棄物処理施設等の拡大、ソリューション(問題解決型)事業や海外での産業基盤、プラントの建設計画、既存プラントの改修計画に関する情報のデータベース化等、補完的な事業の推進が重要視されている。
[大西勝明]