改訂新版 世界大百科事典 「オオハシモズ」の意味・わかりやすい解説
オオハシモズ
スズメ目オオハシモズ科の鳥の1種,または同科の鳥の総称。オオハシモズEuryceros prevostii(英名hermet-bird)は全長約28cm。背面と中央尾羽が赤褐色で,その他は黒色である。くちばしは左右に平たく,上くちばしが非常に大きい。マダガスカル島北部の森林にすみ,樹上で大型の昆虫類およびカエルなどを捕食する。オオハシモズ科Vangidaeは8属12種の小鳥を含み,マダガスカルの特産。全長12~32cm。羽色は背面が黒色,水色,灰色,褐色などで,腹側は一般に白いが,全身あるいは腹が黒いものもある。足はみなじょうぶである。くちばしが非常に変化に富んでいるので有名である。あるものでは細長く下に大きく湾曲し,あるものでは先端が鋭く鉤(かぎ)状に曲がり,あるものでは短く先がとがり,そしてあるものでは厚く左右に平たい。こうしたくちばしの違いが食物と採食行動の違いによることは容易に想像されるが,食物も採食行動もよくわかっていない。現在知られている限りでは,オオハシモズ科の鳥はすべて樹上生で,森林や灌木林にすみ,多くの場合数羽から十数羽の群れで生活している。食性は明らかに動物食で,昆虫類,カエル,カメレオン,トカゲなどが主食である。留鳥で,渡りや長距離の移動はしない。行動中にいろいろな声を出す。しかし,さえずりや繁殖習性についてもほとんどわかっていない。カマハシモズFalculea palliataは高い枝のまたに小枝を粗雑に組み合わせて大きな浅いわん形の巣をつくり,内部に若干の草を敷く。1腹の卵数,抱卵期間,繁殖中の雌雄の役割などはまったく不明である。なお,同科の鳥の英名vangaはもともとカギハシモズVanga curvirostrisの原住民の呼名にちなむ。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報