おとなう(読み)オトナウ

デジタル大辞泉 「おとなう」の意味・読み・例文・類語

おと‐な・う〔‐なふ〕

[動ワ五(ハ四)]《「なう」は接尾語2原義
来訪を告げる。訪れる。
「『ハンスルが家はここなりや』と―・えば」〈鴎外うたかたの記〉
音を立てる。
「木の葉に埋もるる懸樋かけひの雫ならでは、露―・ふものなし」〈徒然・一一〉
便りをする。手紙を出す。
「まことに心憂しとおぼえいりて―・ひ給はぬを」〈夜の寝覚・二〉
[類語]訪れる訪ねる訪問見舞う伺うお邪魔上がる歴訪

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「おとなう」の意味・読み・例文・類語

おと‐な・う‥なふ

  1. 〘 自動詞 ハ行四段活用 〙
  2. 音を立てる。声を立てる。
    1. [初出の実例]「夜は熛火の若(もころ)喧響(オトナヒ)、昼は五月蠅(さばへ)(な)す沸き騰る〈喧響、此をば淤等娜比(オトナヒ)と云ふ〉」(出典:日本書紀(720)神代下)
  3. ( 「訪」とも書く ) 声を立てて案内をこう。転じて、訪問する。来訪する。
    1. [初出の実例]「ふりにたるあたりとて、をとなひきこゆる人もなかりけるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
  4. 手紙をやる。消息する。文通する。
    1. [初出の実例]「さりとて、かき絶えをとなひきこえざらむもいとほしく、人の御名の朽ちぬべきことをおぼし乱る」(出典:河内本源氏(1001‐14頃)葵)

おとなうの語誌

( 1 )名詞「音」に、ある現象を生じる意の接尾語「なふ」の付いて出来た語で、音がする、聞こえるというのが原義であろう。「おとづる」より古く、上代はこの意で用いられており、「源氏物語」の名詞形も「きぬのおとなひ」(帚木)、「このはのおとなひ」(朝顔)のように、おおむね原義が生きている。
( 2 )のような行為、行動を表わす意味はここからの派生と思われる。

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