上がる(読み)アガル

デジタル大辞泉 「上がる」の意味・読み・例文・類語

あが・る【上がる/揚がる/挙がる】

[動ラ五(四)]
そのものの全体または部分の位置が低い所から高い方へ動く。
㋐低い所から高い所に移る。「二階に―・る」⇔おりる
㋑物の位置が高い所へ移る。「遮断機が―・る」「幕が―・る」⇔さがるおりる
㋒物が動き進んで高い空間に移る。「火の手が―・る」「夜空に花火が―・る」
㋓水上や水中から外に移る。「船からおかに―・る」「風呂から―・る」
㋔履物をぬいで家の中に入る。「座敷に―・る」
㋕(揚がる)遊女屋に入って遊ぶ。「妓楼ぎろうに―・る」
㋖《御所が北にあったところから、京都の町で》北に行く。「新烏丸からすま通り竹屋町―・る」⇔さがる
所有者や高位の者の手元に収められる。
㋐収益がある。「純益が―・る」
㋑(挙がる)検挙される。「犯人が―・る」
上の段階や等級へ進む。「学校に―・る」「地位が―・る」⇔さがる
程度が高まる。
㋐他と比較して高い状態にある。「右肩が―・っている」⇔さがる
㋑今までより高い状態になる。「血圧が―・る」「気温が―・る」⇔さがる
㋒(「騰る」とも書く)値段が前より高くなる。「物価が―・る」⇔さがる
㋓いちだんと望ましい状態になる。「男ぶりが―・る」「腕前が―・る」
㋔声が高く発せられる。「歓声が―・る」
㋕勢いがつく。盛んになる。「意気が―・る」「調子が―・る」「気分が―・る」
㋖俗に、気分が高まる。興奮する。「―・る曲」
《血が頭にのぼる意から》のぼせて平常心を失う。「初舞台で―・る」
物事が終わりとなる。
㋐完成する。仕上がる。「仕事が―・る」
双六すごろくなどで、駒が最終の場所に進んで勝つ。また、トランプマージャンなどで役ができて勝つ。「役満で―・られた」
㋒雨がやむ。「夕立が―・る」
㋓その範囲内でまかなえる。「思ったより安く―・った」
㋔脈・乳・月経などが止まる。「つわりが―・る」
㋕魚・貝・虫などが死ぬ。草木が枯れる。「ウリのつるが―・る」
㋖すたれる。だめになる。「車のバッテリーが―・る」
人の目についたり、広く知られたりするようになる。
㋐掲げられる。「表彰の額が―・る」
㋑有名になる。「名が―・る」
㋒(挙がる)表し示される。「証拠が―・る」
㋓効果や実績が現れる。「成果が―・る」
(揚がる)揚げ物ができる。「天ぷらが―・る」
神仏や敬うべき人などに、ある行為がなされる。
㋐神仏に供えられる。「灯明が―・る」
使用人として仕える。「お屋敷に―・る」⇔さがる
㋒「食う」「飲む」「吸う」の尊敬語。召し上がる。「先生は酒を少しも―・りません」
㋓「行く」「訪ねる」の謙譲語。参上する。「お話を伺いに―・ります」
10 昔へさかのぼる。
「なほ―・りての人には、あたるべくもあらじをや」〈・若菜下〉
11 馬が跳ねる。
「馬の―・りさわぐなどもいとおそろしう見ゆれば」〈・三〉
12 髪が逆立つ。
「汗のあゆれば、つくろひたてたる髪なども、みな―・りやしたらむとおぼゆ」〈・二七八〉
13 動詞の連用形のあとに付いて複合語をつくる。
㋐その動作が終わる意を表す。しおわる。「新聞が刷り―・る」
㋑いきつくところまでいっている状態を表す。すっかり…する。「晴れ―・る」「おどされて震え―・る」
㋒さげすみ、ののしる意を表す。しくさる。しやがる。
「おおい、まち―・れ」〈滑・膝栗毛・五〉
[可能]あがれる
[用法]あがる・のぼる――「坂を上がる(登る)」「石段を上がる(登る)」「煙が上がる(昇る)」などでは相通じて用いる。◇「舞台に上がる」「座敷に上がる」などには「登る」は使わない。◇「山に登る」「木に登る」「はしごを登る」では「登る」を使う。◇「上がる」も「登る」も下から上への空間的移動であるが、「はしごを登って、屋根に上がった」「山道を登って、見晴らし台に上がった」などの例からもわかるように、「登る」は途中経過、経由する所を意識していう場合が多いのに対し、「上がる」は到達点ととらえることが多い。「煙が上がる」「煙が昇る」では相通じて用いられるが、「狼煙のろし」の場合は「狼煙が上がる」であって「狼煙が昇る」とはいわない。双六すごろく終着点は「あがり」であって「のぼり」ではない。
[下接句]頭が上がらない意気が揚がるうだつが上がらないオクターブが上がる口が上がる此処ここを踏んだらあちらが上がるたこくそで頭に上がる手が上がるまくらが上がらない脈が上がる
[類語](1上る上昇上り詰める立ち上がる立ちのぼる這い上がるよじ登る駆け上がる/(6降り止む止む雨上がり雨後/(9)㋓訪れる訪ねる訪問見舞う伺うお邪魔おとな歴訪/(13止む

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精選版 日本国語大辞典 「上がる」の意味・読み・例文・類語

あが・る【上・揚・挙・騰】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
    1. [ 一 ] 下の方から上の方へ移る。
      1. 低い所から高い所へ移る。上のほうに移動する。また、物の上に乗る。
        1. [初出の実例]「うらうらに照れる春日にひばり安我里(アガリ)心悲しもひとりし思へば」(出典:万葉集(8C後)一九・四二九二)
        2. 「たかき山にあがり、てんにむかひ」(出典:虎明本狂言・右流左止(室町末‐近世初))
      2. 空中に浮かぶ。また、雲が空に広がる。
        1. [初出の実例]「鏑(かぶら)は海へ入りければ、扇は空へぞあがりける」(出典:平家物語(13C前)一一)
        2. 「『曇ったせゐか暗くなった』『北からずんずん上(アガ)るから、後にゃあ一降り掛るだらう』」(出典:歌舞伎・好色芝紀島物語(1869)四幕)
      3. 水上、水中から陸上へ移る。上陸する。下船する。また、魚などが水揚げされる。
        1. [初出の実例]「魚の陸(くが)にあがれるがごとく、鳥の巣をはなれたるがごとし」(出典:平家物語(13C前)灌頂)
        2. 「千じゅと云所にて船をあがれば」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)旅立)
      4. 地中から地上へ出る。草などが生える。
        1. [初出の実例]「隣の藪から根をさいて見事な笋(たけのこ)が上った」(出典:虎寛本狂言・竹の子(室町末‐近世初))
      5. 風呂から出る。
        1. [初出の実例]「ただいま御湯よりあがらせ給ひて」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)一)
      6. 外から家の中へはいる。
        1. [初出の実例]「あがらふとしても、縁が高さにあがりかねて」(出典:咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)下)
      7. 遊女屋にはいって遊ぶ。妓楼に登楼する。
        1. [初出の実例]「八つを打てあがるきゃくは、みんなあのくらいなもんだ」(出典:洒落本・通言総籬(1787)二)
      8. 学校にはいる。おもに小学校についていう。
        1. [初出の実例]「僕が大島学校に上(アガ)ってから四五日目で御座いました」(出典:日の出(1903)〈国木田独歩〉)
      9. ( 血が頭に上る意 ) のぼせてぼうっとなる。ふだんの落ち着きを失う。
        1. (イ) 「気があがる」の表現の場合。
          1. [初出の実例]「気(け)やあがりぬらん、心ちいと悪しうおぼえて、わざといと苦しければ」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
        2. (ロ) 「あがる」の主語が表わされない場合。
          1. [初出の実例]「湯気(ゆけ)に上(アガ)ったさうだ。ヲイ、番頭、目を回した人があるぜヱ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
      10. 流れのもとの方へ行く。特に、昔へさかのぼる。→上がりたる世上がりての人
        1. [初出の実例]「人々多かる中に、あがりてもかばかり幸あり、すべき事の限り仕うまつりたる人候(さぶら)はず侍り」(出典:栄花物語(1028‐92頃)鶴の林)
      11. 巫女(みこ)などに乗り移っていた神が天に帰る。
        1. [初出の実例]「『それを不足におぼしめさば力及ばず』とて、山王あがらせ給ひけり」(出典:平家物語(13C前)一)
      12. 死体などが、水中より水面に出る。
        1. [初出の実例]「今、水道橋の処へ、死骸が上(アガ)りました」(出典:夢声半代記(1929)〈徳川夢声〉Z枝嬢投身事件)
    2. [ 二 ] 上に立つ者に物などが収められる。
      1. 年貢(ねんぐ)などが領主の手にはいる。転じて、家賃、地代、収益などが、その受け取り手や上の者に収められる。
        1. [初出の実例]「郷国(くに)の田地から上(アガ)小作米が」(出典:暴風(1907)〈国木田独歩〉二)
      2. 領地、役目などを取り上げられる。
        1. [初出の実例]「チギャウ、ヤク agatta(アガッタ)〈訳〉高貴な人の手に差し出される、または、その所有となる」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      3. 犯人が召し取られる。検挙される。
        1. [初出の実例]「ところが一方不図した証拠から真犯人はあがったのであった」(出典:女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉一三)
    3. [ 三 ] 地位、体勢、価値、程度などが高まる。
      1. ある場所が周囲より高くなる。また、からだやからだの一部が高まる。
        1. [初出の実例]「大将軍紀小弓宿禰、龍のごとく驤(アカリ)虎のごとく視て」(出典:日本書紀(720)雄略九年五月(前田本訓))
        2. 「おましの奥の少しあがりたるところを、心みにひきあけ給へれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕霧)
      2. 馬が跳ねる。
        1. [初出の実例]「臆して手綱をつよくひかへたりけるに、やがてあがりて投げけるに、てんさかさまに落ちて」(出典:古今著聞集(1254)一六)
      3. 地位が進む。昇進する。また、進学・進級する。
        1. [初出の実例]「大臣(おとど)、太政大臣にあがり給て」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
      4. 物の値段が高くなる。騰貴する。
        1. [初出の実例]「米麦踊貴(アガリ)、車馬通はず」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
      5. 精神や気分などが高まる。
        1. [初出の実例]「我乍ら甚だ気勢が揚(ア)がらぬ」(出典:俳諧師(1908)〈高浜虚子〉七一)
      6. 能力、勢力、速力、数量、価値などが加わる。
        1. [初出の実例]「昔よりはお智恵があがって」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)一)
        2. 「大変能率の上った事実とは反対に」(出典:故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉一)
      7. 技能などがうまくなる。上達する。一段上の域に達する。
        1. [初出の実例]「万の道の事も、難をよく人に言はれてこそあがる事なれ」(出典:筑波問答(1357‐72頃))
      8. (色が)より鮮やかに染まる。より美しくなる。
        1. [初出の実例]「紫のはつしほそめのにひ衣ほどなく色のあかれとぞおもふ」(出典:清輔集(1177頃))
      9. 様子がよくなる。また、人間として立派になる。
        1. [初出の実例]「道理だ。別に女ぶりが上(アガ)った」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
      10. あたりによく聞こえるような声が出る。高く発せられる。「歓声が上がる」
        1. [初出の実例]「其刹那に、児の初声は挙(アガ)りて」(出典:妾の半生涯(1904)〈福田英子〉一一)
    4. [ 四 ] 人によく見えるようになる。広く知られるようになる。
      1. 高く揚げられる。また、掲載される。「旗が揚がる」
        1. [初出の実例]「うたまくらに名あがりたるところどころなどを書きつつ」(出典:大鏡(12C前)三)
      2. (名前などが)人によく知られるようになる。
        1. [初出の実例]「さてかばかりの詩をつくりたらましかば、名のあがらむこともまさりなまし」(出典:大鏡(12C前)二)
      3. (事実、証拠、たくらみなどが)はっきり表に現われる。
        1. [初出の実例]「はて、じたばたせまひ。工(たく)みの手目(てめ)は上ってある」(出典:歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)一)
      4. (効果、実績などが)目立って出てくる。
        1. [初出の実例]「今日に至るまで未だ実効の挙るを見ず」(出典:学問のすゝめ(1872‐76)〈福沢諭吉〉四)
    5. [ 五 ] 物事が終わりになる。
      1. できあがる。役目が終わる。習い終わる。すむ。
        1. [初出の実例]「フシンガ agaru(アガル)〈訳〉工事が完成する」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. すごろくやゲームで、札が最終の場所にはいって勝つ。
        1. [初出の実例]「所謂飛双六で有って、早く上(アガ)ったものが勝を占(し)むるので有る」(出典:東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉一月暦)
      3. カルタ遊びやトランプなどで手札を場に出し尽くしたり場札を取り尽くしたりして勝つ。また、トランプ、マージャンなどで、役を作って勝つ。
        1. [初出の実例]「読(よみ)のかるたは壱枚のこり、あがられぬ事八つの善ありながら、壱つの悪にひかさるる心なり」(出典:咄本・鹿の巻筆(1686)一)
      4. 雨などがやむ。天気がよくなる。また、雨期が終わる。
        1. [初出の実例]「ツユ、または、ナガシガ agaru(アガル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      5. ある費用で、無事にすむ。ある金額で片がつく。
        1. [初出の実例]「こちの檀方(だんぱう)に死かかってをる病人があるさかい、それと一所に割合でさしゃると、いかう下直(げぢき)にあがります」(出典:滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)初)
      6. (貴人の膳が)取り下げられる。
        1. [初出の実例]「ゴゼンガ agaru(アガル)、ゴゼンガ スベル、または、クダル」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      7. 商売、仕事などがうまくゆかなくなる。生活が立ちゆかなくなる。
        1. [初出の実例]「されば其人ぜんせいのじぶん、あがるべしとは人も思はず」(出典:評判記・難波物語(1655))
        2. 「商売は上ってしまふのだった」(出典:海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉二三)
      8. (脈、乳、月経などが)止まる。絶える。
        1. [初出の実例]「手足びりびりとふるひ其まま脉(みゃく)あがりぬ」(出典:浮世草子・本朝桜陰比事(1689)四)
      9. 魚、貝、虫などが死ぬ。また、草木が枯れる。
        1. [初出の実例]「惣じてあがるといふ詞は、魚の死してはたらかざる㒵(かたち)をいふ」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一)
      10. 蚕が成長して繭を作らせるための、わらの床に乗せるべき状態になる。
      11. 熱い油であげて、食物が食べられる状態になる。
    6. [ 六 ] 敬意を払うべき人に物が渡される。また、そういう人のいる場所へ向かって行く、訪問する。
      1. 神仏に物が供えられる。
        1. [初出の実例]「当坊へあかり申御供数」(出典:北野社家日記‐慶長六年(1601)正月朔日)
      2. 貴人に献上される。
        1. [初出の実例]「ウエサマエ シンモツガ agatta(アガッタ)、カタナガ agatta(アガッタ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      3. ( 内裏が北にあったので ) 京都で、北へ行く。
        1. [初出の実例]「九重は上る下るでむづかしい」(出典:雑俳・口よせ草(1736))
      4. 田舎から京阪地方へ行く。→上がり[ 一 ]
      5. 大阪で、城の方へ行く。
        1. [初出の実例]「阿波座を上(かみ)へあがり」(出典:浮世草子・好色万金丹(1694)四)
      6. 屋敷などに奉公に行く。
        1. [初出の実例]「此子が上(アガ)りましたお屋敷さまは」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
      7. 他人の家を訪問する意の謙譲語。参上する。
        1. [初出の実例]「藤間さんがお屋敷へお上(アガ)んなさいますから」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
    7. [ 七 ] 補助動詞として用いる。動詞の連用形に付く。
      1. その動作が終わる意を表わす。「染め上がる」「刷り上がる」
      2. その動作が激しくなる意を表わす。
        1. [初出の実例]「ただ言ひに言ひあがりて」(出典:落窪物語(10C後)二)
      3. いやしめ、ののしる気持を添える。くさる。やがる。
        1. [初出の実例]「ヤイかしましい。あたり隣も有ぞかし、よっぽどにほたへあがれ」(出典:浄瑠璃・女殺油地獄(1721)中)
        2. 「ヲヲイまちあがれ」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)五)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 「食う」「飲む」の尊敬語。
    1. [初出の実例]「中々ことの外むまうござる。一つあがりまらせひ」(出典:虎明本狂言・饅頭(室町末‐近世初))
    2. 「お父様は巻烟草は上(アガ)らない」(出典:ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉)

上がるの語誌

( 1 )アガルとノボルは、共に上への移動を表わすという点で共通する類義語であるが、アガルが到達点に焦点があり、そこに達することを表わすのに対して、ノボルは経過・過程・経路に焦点があるという点が異なる。「川を(船で)ノボル」「×川を(船で)アガル」「川から(岸に)アガル」「川から(谷づたいに山へ)ノボル」
( 2 )アガルは、ある到達点に達することを表わすところから、[ 一 ][ 一 ]のように基本的には初めの状態を離れること、ある段階から抜け出すことを表わし、その経過・過程は問題にしない非連続的な移動である。そのため、アガルの場合、アガルものが物全体か一部かにかかわらず、視点の向けられているものの移動ということが問題になる。それに対して、ノボルの場合は、少しずつ移動する過程が明らかになるような、それ自体の全体的移動を表わし、しかも自力で移動が可能な事物に限定される。「生徒の手がアガル(×ノボル)」「ダムの水面がアガル(×ノボル)」「いつのまにか血圧がアガッていた」「興奮して頭に血がノボッていくのがわかった」
( 3 )到達点という結果に焦点があるアガルは、「ている」を付けてアガッテイルとすると動作・作用の結果を表わす。過程に焦点があるノボルはノボッテイルとすると現在進行中の動作を表わす。「のろしが(森の上に)アガッテイル」「煙が(空へ)ノボッテイル」
( 4 )また、アガルは、到達点に達するというところから、[ 一 ][ 五 ]のように最終的にある段階に達して完了すること、終了することをも表わすことになる。

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