夜の寝覚(読み)ヨルノネザメ

デジタル大辞泉 「夜の寝覚」の意味・読み・例文・類語

よるのねざめ【夜の寝覚】

平安後期の物語。5巻または3巻。作者菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめと伝えられるが未詳。成立年未詳。中の君寝覚の上と中納言との悲恋物語。源氏物語影響が強い。夜半よわの寝覚。寝覚。

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共同通信ニュース用語解説 「夜の寝覚」の解説

夜の寝覚

夜の寝覚ねざめ 平安後期文学の代表作の一つ。男性が主人公の「源氏物語」などと違い、女性の主人公がさまざまな男性に愛され、波乱に富んだ生涯を送るストーリーが特徴。「更級日記」で知られる菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめの晩年の作と考えられている。

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精選版 日本国語大辞典 「夜の寝覚」の意味・読み・例文・類語

よるのねざめ【夜の寝覚】

  1. 平安中期の物語。五巻または三巻。菅原孝標(たかすえ)の女の作と伝えるが不明。後冷泉朝(一〇四五‐六八)頃の成立か。女主人公寝覚の君(源氏の太政大臣の次女)と主人公中納言の義兄妹間の悲恋を中心に、女君の数奇な運命を描く。「源氏物語」の影響が強い。中間と末尾に欠巻があるが「風葉和歌集」「無名草子」などにある断片や、鎌倉時代の改作梗概本である中村本などによって大筋は推定される。「夜半(よわ)の寝覚」「寝覚」とも。

よる【夜】 の 寝覚(ねざめ)

  1. 夜、就寝中に目が覚めること。
    1. [初出の実例]「さすがに、すがすがしく思ひたつべくもあらぬ絆(ほだし)がちになりまさるこそ、心憂けれと、よるのねざめたゆるよなくとぞ」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)五)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「夜の寝覚」の意味・わかりやすい解説

夜の寝覚
よるのねざめ

平安後期の物語。『夜半(よわ)の寝覚』とも、単に『寝覚』ともよばれる。現在の伝本は五巻または三巻であるが、その中間部分と終末部分とに大きい欠巻部分がある。原形態は、現存本の2倍から3倍の量があったと推定されるが、厳密には不明である。作者については、藤原定家(ていか)が『浜松中納言(はままつちゅうなごん)物語』などとともに菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)の作と伝える(定家筆『更級(さらしな)日記』奥書)。現在なお確認されていないが、孝標女作説はもっと検討すべきであろう。物語は、太政(だいじょう)大臣の次女寝覚(ねざめ)の上(うえ)(中の君)の数奇な生涯を、彼女の心を掘り下げつつ息長く追求したもの。

 少女時代に「あたら人の、いたくものを思ひ、心を乱したまふべき宿世(すくせ)」と予言された女主人公は、その予言どおりに悲運の人生を送る。不幸な出会いのあと、男主人公(左大臣長男、中納言)は彼女の姉の夫となり、彼女もまた心ならずも老関白に嫁ぐ。男君は終始一貫女主人公を恋慕し続けるが、姉君が死に、寝覚の上が若き未亡人となってからも、二人の間には内外の障害が絶えない。すべての障害が除かれたときには、女主人公の心は男君を離れ、彼岸(ひがん)を希求していた。

 女の危機のたびに彼女の意志と責任で生き抜くことを課し、そのつど、心の深層を探り当てるなど、執拗(しつよう)なまでの心理追求に特色をもつ、女が女の心を描いた特色ある長編物語である。『源氏物語』の影響下にあり、大きい欠巻をもちながら傑作と称されるのは、この特色による。なお、これを題材とした絵巻『寝覚物語絵巻』一巻(国宝、奈良・大和文華館)が現存する。

[鈴木一雄]

『阪倉篤義校注『日本古典文学大系78 夜の寝覚』(1964・岩波書店)』『鈴木一雄校注・訳『日本古典文学全集19 夜の寝覚』(1974・小学館)』『鈴木一雄・石埜敬子校注・訳『完訳日本の古典 夜の寝覚(1)(2)』(1984、85・小学館)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「夜の寝覚」の意味・わかりやすい解説

夜の寝覚
よるのねざめ

平安時代後期の物語。『夜半 (よわ) の寝覚』ともいう。作者は菅原孝標女 (たかすえのむすめ) という伝承があるが,ややのちのものであろう。現存本は5巻。もとは2~4倍の分量があったと推定される。成立年未詳。改作本の『中村本夜半の寝覚』や『無名草子』『拾遺百番歌合』『風葉和歌集』などによって物語を復元すると,女主人公の太政大臣の中の君が,天人の予言どおりに,男主人公である関白左大臣の子の中納言と関係を結ぶ,その苦悩に満ちた運命を描いたものである。

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世界大百科事典(旧版)内の夜の寝覚の言及

【夜半の寝覚】より

…平安後期の物語。現存本の題名は《寝覚》または《夜の寝覚》。作者は菅原孝標女(たかすえのむすめ)と伝えるが,確かでない。…

※「夜の寝覚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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