日本大百科全書(ニッポニカ) 「オピニオン・リーダー」の意味・わかりやすい解説
オピニオン・リーダー
おぴにおんりーだー
opinion leader
世論形成に重要な役割を演ずる人物をいう。人々は自分の意見を形成するにあたって、信頼できる人物に情報や助言を求め、参考にする傾向をもっている。広義には、産業界の、○○町の、あるいは日本のオピニオン・リーダーというように、特定の分野、地域社会、あるいは社会全体において、それが当面する重要な問題を喚起し、人々の意見形成に影響を与え、世論を動かす人物をいう。狭義には、社会学用語として、地域社会あるいは集団において、特定の問題に対して他の人々よりも強い興味と関心を寄せ、詳しい情報を所有する人物をいう。問題ないしは情報の領域ごとに、オピニオン・リーダーは存在する。地域社会や集団において新しい情報(イノベーションあるいは新しいアイデア)が浸透する際には、これらのリーダーが媒介の作用を演ずる。情報がオピニオン・リーダーを媒介にして社会的に伝達され、影響力を発揮する過程を、「コミュニケーションの二段階(ないしは多段階)の流れ」という。
現代のように、マス・コミュニケーションが発達した状況のもとでは、情報はマス・メディアから直接的に一般の人々に伝達される。しかし、その情報をどのように判断し、解釈し、そして行動すればよいかの情報は、マス・メディアから得られないことが多い。マス・メディアにかわって、一般の人々に助言や判断を与える人物がオピニオン・リーダーである。彼らは、社会における情報の影響力の流れを担う人物であり、問題ないしは情報の分野ごとに異なるところから「水平的オピニオン・リーダー」とよばれ、広義のオピニオン・リーダー(垂直的オピニオン・リーダー)から区別される。
[藤竹 暁]
『E・カッツ、P・F・ラザースフェルド著、竹内郁郎訳『パーソナル・インフルエンス』(1965・培風館)』▽『E・M・ロジャース著、藤竹暁訳『技術革新の普及過程』(1966・培風館)』