第一次集団の日常的な対人関係のなかで、人々の意見や行動の変容にかかわる個人的な影響力のこと。影響力を行使する人々はオピニオン・リーダーとかインフルエンシャルとよばれる。1940年のアメリカ大統領選挙の際P・F・ラザースフェルドらが行った投票行動の調査研究で発見された、有名な「コミュニケーションの二段階の流れ」仮説を支える鍵(キー)概念である。
従来の研究によると、パーソナルな影響は一般に、〔1〕政治、買い物、ファッションなどといった特定の個別的行動領域に限定されている、〔2〕垂直的であるよりも、水平的に流れる、〔3〕個人の意思決定の局面で、とりわけ意思未決定者の場合に、マス・コミュニケーションの影響力よりも有効である、と考えられている。さらに、説得コミュニケーションとしてのパーソナルな影響力の有効性をめぐる論拠として、〔1〕パーソナルな接触における無意図性あるいは偶然性、〔2〕被影響者の抵抗にあった場合、臨機応変に対処できる融通性、〔3〕パーソナルな影響を受け入れた場合の即時的報酬性、〔4〕身近な情報源への信頼性、〔5〕信念や態度を変容せずに、個人的な感情や忠誠心をてこに人々を説得できること、があげられている。マス・コミュニケーション過程におけるパーソナルな影響の事実発見の意義は、マス・コミュニケーション全能論の前提であった原子的大衆像にかわって、第一次集団の多様な対人関係に日常的に関与している受け手像の提起にあったといえる。
[岡田直之]
『E・カッツ、P・F・ラザースフェルド著、竹内郁郎訳『パーソナル・インフルエンス』(1965・培風館)』
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