日本大百科全書(ニッポニカ) 「カインツ」の意味・わかりやすい解説
カインツ
かいんつ
Joseph Kainz
(1858―1910)
ドイツの俳優。ハンガリーに生まれる。マイニンゲン公劇団で修業し、1874年ウィーンでデビュー、80年にはミュンヘン宮廷劇場に移り、バイエルン国王ルードウィヒ2世と親交を結んだ。83年新設のベルリンのドイツ座に出演、名女優アグネス・ゾルマと競演して全盛期を築き、99年にはウィーンのブルク劇場に迎えられた。この間アメリカ巡演を試み、92年にはハムレットを演じて大当りをとっている。役柄は広く、とくにシェークスピア、シラー、グリルパルツァーの主人公を得意とし、絶妙な台詞(せりふ)回しと心理描写によって、自然主義出現前のドイツ劇壇に一時代を築いた。
[大島 勉]