カウリー(読み)かうりー(英語表記)Abraham Cowley

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カウリー」の意味・わかりやすい解説

カウリー(Malcolm Cowley)
かうりー
Malcolm Cowley
(1897―1989)

アメリカの詩人、批評家。ペンシルベニア州に生まれ、ハーバード大学卒業後、グリニジビレッジでのボヘミアン生活を経て、パリへ赴き、国籍離脱者の一人として同世代の作家たちと交遊をもった。詩集『青きジュニアータ』(1929)、「失われた世代(ロスト・ジェネレーション)」の遍歴を描いたエッセイ『亡命者帰る』(1934)はこの時期の所産であり、以後『文学状況』(1954)、『30年代への回顧』(1967)、『窓多き家』(1970)などの評論集、詩集『渇いた季節』、さらにはホーソンヘミングウェイフォークナーの選集編纂(へんさん)など多方面の活躍を続け、とくに1946年編の『ポータブル・フォークナー』はこの大作家の再評価のきっかけをつくった。

[原川恭一]


カウリー(Abraham Cowley)
かうりー
Abraham Cowley
(1618―1667)

イギリスの詩人。E・スペンサー、B・ジョンソン、J・ダンらの影響を受けた。強烈な個性をもった詩人というよりは、近代科学精神とキリスト教ヒューマニズムが、また形而上(けいじじょう)詩の機知と新古典主義の良識的感覚が融合した、形而上派詩人(メタフィジカル・ポエット)としてはイメージの織り出し方が比較的穏やかな詩人である。15歳で『詞華集』(1633)を出版、内乱時は王党を支持してフランスに追われ、そのため王党派詩人として分類されることもある。王政復古とともに帰国し、詩のほかに当時流行の庭園論や自然と人間と孤独をめぐる優れたエッセイも残した。代表作は恋愛詩集『恋人』(1647)。

[河村錠一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カウリー」の意味・わかりやすい解説

カウリー
Cowley, Abraham

[生]1618. ロンドン
[没]1667.7.28. サリー,チーシー
イギリスの詩人。 15歳でスペンサーにならった『詩花集』 Poeticall Blossomes (1633) を書く早熟さを示し,ケンブリッジ大学在学中に牧歌劇『恋のなぞ』 Love's Riddle (38) ,清教徒攻撃の喜劇『保護者』 The Guardian (41) を出した。 1643年内乱のためケンブリッジを追われ,45年パリへ逃亡,王妃ヘンリエッタ・マリアの秘書官となり,困難な外交任務についた。 56年王党派のスパイとして帰国,投獄された。保釈後オックスフォード大学で医学を学んだ。王政復古後は志を得ず,チーシーに隠棲した。最後の形而上詩人といわれ,恋愛詩集『恋人』 The Mistress (47) ,未完の叙事詩『ダビデ讃』 Davideis (56) ,『ピンダロス風オード』 Pindarique Odes (56) などがある。散文の名手としても知られ,『散文および韻文によるエッセー』 Essays in Verse and Prose (68) がある。

カウリー
Cowley, Malcolm

[生]1898.8.24. ペンシルバニア,ベルサノ
[没]1989.3.27. コネティカット
アメリカの批評家,詩人。第1次世界大戦に衛生隊員としてフランスにおもむき,1920年にハーバード大学卒業。その後再びパリに渡り,23年帰国。 29~44年『ニュー・リパブリック』誌の編集にたずさわる。みずからもその一人である「失われた世代」についてのすぐれた証言『亡命者帰る』 Exile's Return: A Narrative of Ideas (1934,51改訂) ,評論集『文学的状況』 The Literary Situation (54) ,『窓多き家』A Many-Windowed House (70) などのほか,フォークナー再評価の契機となった『ポータブル・フォークナー』 The Portable Faulkner (46) をはじめとする多くの編著,詩集『青いジュニアタ』 Blue Juniata (29) ,『乾期』 The Dry Season (42) がある。

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