日本大百科全書(ニッポニカ) 「カクストン」の意味・わかりやすい解説
カクストン
かくすとん
William Caxton
(1422?―1491)
イギリスで最初に活版印刷物を出版した人。ケント州に生まれ、ロンドンで織物商に奉公、現ベルギーのブリュージュに渡って織物商組合代表者となったが、1468年ごろからフランス語の翻訳を始め、1474年ごろ英語の『トロイ物語集』を出版した。1477年に帰国、ウェストミンスターに住んで、チョーサーの『カンタベリー物語』などを出版し始め、死ぬまでに80冊に上る翻訳書、その他の出版を行った。国王や金持ち商人に人気を得たが、その出版物には古典は多くない。しかし、英語の書き方がまだ確立していなかった時代に、活版印刷によって新しい文章をつくったことは評価されている。
[伊藤慎一]
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