カタンはコットンcottonのなまった語といわれるが、綿糸の手縫い糸、手編み糸にも用いられ、現在では広く絹、合繊を材料とした縫い糸をも包括し、主としてミシン用縫い糸をいう。各種の撚(よ)り糸があり、単糸を2本または3本あわせた二子糸、三子糸のほか、コード糸とよばれる二子糸の3本撚り、三子糸の3本撚りがある。いずれもエジプト綿か上質の米綿のコーマ糸を用い、次のような仕上げ加工により種類が異なる。(1)せっけん、白蝋(はくろう)などの油脂を加えたデンプン糊(のり)を施した糸を、ロール機、ブラシ機などで十分に張力を加えて摩擦し、磨きを行って艶(つや)をつけたグレース。(2)艶をつけずに、柔軟な糊仕上げをしたソフト。(3)糸に強い張力をかけながら、カ性ソーダ溶液中を通過させたマーセライズ(加工前にガス焼を行うこともある)。
綿カタン糸の番手は一般の綿糸の番手と異なり、JIS(ジス)(日本産業規格)では次のように定められている(N=カタン糸番手、a=合糸数、b=原糸番手)。
6番、8番、10番、その後は10番刻みで120番まで使われる。家庭用、工業用など用途に応じ、スプロールに平行に巻いた駒(こま)巻きと、紙筒に綾(あや)がけに巻いた綾巻きがあり、糸長も多様である。各種色糸がある。
[岡田浩海]
ミシン糸に使われる強い綿糸。カタンはコットンのなまり。1812年にスコットランドで初めて作られ,日本へは大正時代中期にミシンとともに輸入され,1935年ころから国産された。強伸度を増すため,紡績工程でコーマ掛け(くしけずり)した綿糸を2本撚(よ)り合わせ,この加撚した糸をさらに3本撚り合わせてある。たとえば実質番手約20番のカタン糸(60番カタン糸)の構成は120'S(120番手の単糸を表す)の綿糸を2本撚り合わせ(120'S/2≒60番),さらにこの糸を3本撚り合わせ(120'S/2/3=60'S/3≒20番)て作られている。多く作られているのは30'S/3,30'S/6,50'S/3,80'S/3。80'S/3以上のカタン糸の仕上げは通常ガス焼きを行い,それ未満のものにはガス焼きをせず精練漂白がされる。最終仕上げとして,乾いたパラフィンの間を通す蠟引きかパラフィンを溶かしたのりの中を通して糸みがきがされ,巻き取られる。通常40番以下の糸にはアメリカ綿,50番以上の細い糸にはエジプト綿が使われる。
執筆者:瓜生 敏之
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