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風景画 ふうけいがlandscape painting

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

風景画
ふうけいが
landscape painting

風景を主題とした絵画エジプトクレタ美術では風景が図式的に表現され,また中国では5世紀以前から絹布に墨を使用した風景画 (→山水画 ) が描かれていたが,ヨーロッパでは最も早い例として古代末期のポンペイなどのフレスコ画をあげることができる。中世では,宗教的な要請から風景描写は軽視され,ときに背景に表現されてもきわめて象徴的なものでしかなかった。ルネサンス頃に風景画という言葉が使用されはじめ,1400年以後のフランドル絵画,1500年頃のデューラー,レオナルド・ダ・ビンチ,ブリューゲルらの素描などによって,再び写実的な風景画が描かれるようになった。パティニールは想像による風景画に新境地を開拓したが,絵画の独立した一分野として確立したのは,17世紀オランダで,レンブラント,ホイエン,ロイスダールホッベマなどが代表者である。フランスでも,ロランプーサンらが理想的な風景画を完成した。 18世紀に一時衰微したが,19世紀にはイギリスのコンスタブルターナー,ドイツのフリードリヒ,フランスのコローらのバルビゾン派を経て,印象派が興り,19世紀後半から 20世紀前半の絵画の最も重要な分野の一つとなった。

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デジタル大辞泉の解説

ふうけい‐が〔‐グワ〕【風景画】

風景を主題とする絵画。

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百科事典マイペディアの解説

風景画【ふうけいが】

風景を主題にした絵画。landscape painting。東洋では山水画と呼ばれて古くから発達したが,西洋では長く人物画等の背景にすぎなかった。ルネサンス期にドイツ,ネーデルラント,ベネチアなどの絵画に萌芽をみ,17世紀オランダで一ジャンルとして確立,レンブラントロイスダールホッベマらの巨匠が輩出した。
→関連項目アルトドルファー浮世絵歌川広重葛飾北斎佐竹曙山富岳三十六景ブリューゲル

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世界大百科事典 第2版の解説

ふうけいが【風景画 landscape painting】

風景を主なる表現対象とした絵画をいう。絵画もしくは浮彫等の背景に風景を表現することは早くにエジプト,クレタ,アッシリアなどの美術に見られるが,風景のための風景画の独立は西洋ではルネサンス期に初めて成立するに対し,中国ではすでに六朝時代に山水画が描かれ,隋唐より日本へも伝来(例,正倉院御物の琵琶の桿撥(かんぱち)画)し,やまと絵へと摂取されていく。これは西洋の美術が人体表現を主眼とするに対し,中国や日本では人物画も古くよりあるが,自然の崇敬愛好が早くから文学を介して美術の主題とされたことに基づく。

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大辞林 第三版の解説

ふうけいが【風景画】

自然の風景を描いた絵画。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

風景画
ふうけいが
landscape painting英語
paysageフランス語
Landschaftsmalereiドイツ語

自然の風景、都市、建築など、戸外の景観を描いた絵画。絵画表現のなかで、人体像とともにもっとも主要な対象となり、それぞれの時代・社会の自然観、空間の意識を伝えてくれる。しかし、古代エジプト、メソポタミア、ギリシアなどでは、さまざまな主題、とくに風俗的情景、物語的情景の背景に自然の諸要素が配置されていることがあっても、それらはまだ記号的・象徴的な表現にとどまっている。都市や建築の景観を含めた自然空間への意識、換言するなら、ある視点から見た空間を二次元上の平面に統一的に把握しようとする試みは、ヘレニズム期の田園詩的情景を示す壁画やモザイク類に現れ、ローマ絵画に受け継がれる。そこには、近世の遠近法的な視野の統一性は十分に備わっていないが、風景がその牧歌性、幻想性によって鑑賞され、ほとんど純粋な風景画に近い作品が成立する。
 中世には、背景空間はふたたび観念化され、象徴化される。けれども中世後期、宗教画の情景設定にも、世俗的な主題の情景にも、統一的空間の意識が現れる。14世紀前半に属するアンブロジオ・ロレンツェッティの『善政』(シエナ、パラッツォ・プブリコの壁画)は、広やかな眺望の中に丘や野、都市を描き、また手写本装飾画やタペストリーにも、自然空間の描写が現れる。
 ルネサンス期、イタリアにおける線遠近法の発見と確立、フランドルにおける経験的な遠近表現の技法の発達によって、宗教画、神話画、肖像画を問わず、情景は現実的な自然空間や都市空間の中に設定されることとなる。そうした自然探究の間に、アルトドルファー、レオナルド・ダ・ビンチ、デューラーたちの小品の素描、水彩画が示すように、ほとんど独立した風景画が生まれる。
 16世紀後半から17世紀にかけて、風景画はしだいに独立し、寓意(ぐうい)、宗教、神話などの主題を含みながらも風景に重点を置く作品も多く制作される。地誌的風景、逆にさまざまな土地の風物を合成した「世界風景」、神話などの題材を含んで展開するいわゆる「英雄的」理想主義的風景、古代の遺跡などを好んで題材とする遺跡画、都市風景、海景など、多様な風景画が成立する。17世紀オランダのレンブラント、ロイスダール、ホッベマ、フランスのクロード・ロラン、プサン、スペインのベラスケスなどが多くの優れた風景画を残している。
 17世紀の風景画にみられる光への関心は、18世紀イギリスのゲーンズバラ、コンスタブル、イタリアのカナレット、フランスのフラゴナールたちによって、いっそう生き生きとした探求となり、19世紀のロマン派以降の風景画全盛期へと受け継がれる。
 19世紀初頭のコンスタブル、フランスのバルビゾン派、クールベたちリアリストの自然への接近は、印象主義によって一つの頂点を迎える。従来の理想主義的、ロマン主義的な自然観にかわって、より即物的な視覚、時々刻々に変化する光や大気への情緒の成立によって、近代風景画の変革がなされたのである。
 18世紀まで、フランスのアカデミーでは、宗教画、歴史画に比べて、風景画は低いジャンルとみなされてきたが、19世紀には、風景画は静物画や人物画と並ぶもっとも主要なジャンルとなり、印象派以降の各流派、各個性のそれぞれの作風によって多様な展開を遂げ、20世紀における造形の目覚ましい変革のなかでも、一つのジャンルであることを主張している。
 なお、東洋では一般に山水画とよばれ、一ジャンルを形成している。[中山公男]
『K・クラーク著、佐々木英也訳『美術名著選書4 風景画論』(1976・岩崎美術社)』

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世界大百科事典内の風景画の言及

【浮世絵】より

… 江戸の町人文化の成熟にともなって,後期には主題の分化がいちじるしく進んだ。とくに際だって注目されるのは,他の画派にあってはつねに主要な関心事である風景画と花鳥画の両分野の,浮世絵における成立と流行である。風景画には,特定の土地の風光の美とそこに営まれる人々の暮しぶりを紹介しようとした名所絵と,旅する人の目で宿駅や道中の景観と風俗とを描いた道中絵の二様があり,いずれも人事と深くかかわりをもった人間臭い風景描写を特色としている。…

【絵画】より

…また木版画,銅版画,石版画などの版画,あるいはその応用としての挿絵,ポスターなども,色と形による平面の造形芸術であるかぎり,絵画の一分野と考えられる。絵画の分類としては,画材,形式による分類のほか,主題による分類(歴史画肖像画,風景画静物画風俗画等),社会的機能や役割による分類(宗教画,装飾画,記録画,教訓画等),地理的分類(イタリア絵画,フランス絵画,インド絵画等),歴史的流派や様式による分類(ゴシック絵画,バロック絵画,古典主義絵画,抽象絵画等)などがある。
[絵画の起源]
 古代ギリシアのある伝説は,絵画の起源を次のように語っている。…

【ドナウ派】より

…彼らは一派を形成したわけではなく,また個人的なつながりもほとんどなかったが,ドナウ河畔の美しい自然に対する風景感情のめざめという点で共通していた。風景画というジャンルがまだ確立せず,実景を写すことも一般的でなかった当時にあって,ドナウ派が風景画史上に果たした役割は少なからぬものがある。当時のイタリアの風景描写が,多かれ少なかれ理想化されていたのに比べ,ドナウ派のそれは画家と自然との直接のふれ合いから生ずる清新な抒情性をたたえており,この点で同時代のJ.パティニールやブリューゲルなどネーデルラントの風景画とも一線を画している。…

【光】より

…このような写実的な光の表現は,線遠近法による合理的空間表現とともに,ルネサンスから19世紀に至る西洋絵画の基本的特色をなす。天候や時刻が識別できる風景画が発達し得たのも,このような光の表現があればこそである。 これに対し中世美術においては,光はきわめて重要な要素ではあるものの,そのあり方は古代および近世と著しく異なる。…

【風景写真】より

…添景としての人物などを取り合わせる場合もあるが,これが主要な対象となるときは,普通,風景写真とはいわない。 写真が発明される以前に,絵画にはすでに〈風景画〉という形式が確立しており,写真が出現した当初,画家や美術に関心を寄せる者が中心となり写真撮影を試みていたから,当然のこととして風景画の様式を追従した風景写真が多く撮られた。これは当時の,写真を芸術の域にまで高めようとする努力の結果であり,現在の考え方を当てはめて一概にその模倣性を非難することはできない。…

※「風景画」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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