日本大百科全書(ニッポニカ) 「グアルディ」の意味・わかりやすい解説
グアルディ
ぐあるでぃ
Francesco Guardi
(1712―1793)
イタリアの画家。ベネチアの画家一族グアルディ家の一員。父ドメニコの後を継いだ長兄ジョバンニ・アントニオに画業を習い、初めはこの兄のもとで主として宗教画を手がける。しかしその一方で彼は、マルコ・リッチが広めた「カプリッチョ」とよばれる仮想の風景画や、ベネチアの街をカメラ・オブスキュラ(暗箱)で、正確に描写したカナレットの絵に早くから興味を示した。後年、とくに1769年の兄の死後は、もっぱらこの種の作品を制作する。ベネチアを描いた彼の風景画はカナレットのそれとは異なり、独特の叙情性と幻想性にあふれている。また軽妙で暗示に富んだ筆致が描き出すその世界は、19世紀の印象派の絵画に通ずるところがある。彼はカナレットのように外国人の注意をひくこともなく、73歳になってようやくアカデミーの会員に選ばれたほど、その生涯はつつましく、その制作態度は職人的であった。だが彼の作品は特有の近代性を有しており、ベネチア・ロココ美術のなかでも異彩を放っている。
[石鍋真澄]