別名テンジクネズミと呼ばれる尾のないずんぐりした姿の齧歯(げつし)目テンジクネズミ科の哺乳類。野生種は南アメリカのベネズエラ北西部からチリ中部に分布するチリテンジクネズミC.tschudiiと同一種ともいわれる。家畜化された子孫は世界中で飼育されている。体長25cm前後,尾は外観上なく,体重約450g。耳は小さく丸く無毛で,吻(ふん)は有毛。前足に4指,後足に3指があり,幅広いかぎづめをもつ。門歯は白色で,門歯,臼歯(きゆうし)とも無根で一生のび続ける。体は野生種では灰色,あるいは褐色がかっているが,家畜種では黒色,白色,クリーム色,チョコレート色,黄褐色,赤褐色などさまざまで,長毛のものと短毛のものがある。
ふつう5~10頭の小さな群れでくらし,自分で掘った穴や他の動物が捨てた穴を巣とする。昼行性ではあるが,日没後にもっともよく活動し,利用できるあらゆる種類の植物を食べる。飼育下では草,野菜,パン,穀類などを食べ,水もよく飲むが,新鮮な野菜を与えれば水は必要でない。性質はおとなしく,かん高い声でよく鳴く。繁殖は年に1~2回で,妊娠期間約68日の後,1産1~4子を生む。家畜種では年中繁殖可能であるがピークは春である。年に数回,1産1~13子,平均4子を生む。子はよく発育した状態で生まれ,開眼,有毛で体重約100g,生後2~3時間で走ることができ,翌日には固形物をかじれるが,3週間は乳を飲み続ける。寿命は飼育下で約8年である。
モルモットは少なくとも3000年ほど前のインカ時代から食用として家畜化されていたようで,アンデス地方では貴重なタンパク質源であり,現在でも〈パチャマンカ〉と呼ばれるインカ伝来のモルモットの石焼き料理として残っている。完全な家畜化は比較的新しく,ベネズエラ北西部からチリ中部の間,おそらくペルー付近で500年ほど前だろうといわれる。16世紀ころ,オランダの探検家によりヨーロッパに移入されたといわれ,モルモットの名はオランダ人がヨーロッパ産のマーモットmarmotと本種とを誤認したことに起因すると考えられている。
飼育が容易なためペットや医学,生物学の実験用に広く使われ,現在では実験動物の代名詞のようになっている。かつて致命的な小児病だったジフテリアは,モルモットを使用した研究により,その正体が明らかにされた。
執筆者:今泉 忠明
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…医学,生物学の研究のための動物実験やバイオアッセー(生物検定)に用いることを目的に育種された動物。代表的なものとしてはマウス,ラット,モルモット,ハムスターなどがあげられる。 従来,実験動物の呼称は広く〈実験に使用される動物〉の意味で使われていたが,このなかには実験動物のほかに家畜や野生動物も含まれており,これらはまとめて一般に実験用動物と総称される。…
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