カブレラインファンテ(読み)かぶれらいんふぁんて(その他表記)Guillermo Cabrera Infante

デジタル大辞泉 「カブレラインファンテ」の意味・読み・例文・類語

カブレラ‐インファンテ(Guillermo Cabrera Infante)

[1929~2005]キューバ小説家。のちにロンドン移住言葉遊びや言語実験の多用特徴とする。作品に、革命前のハバナの人々の生活を描いた長編「淋しい三匹の虎」や「亡き王子のためのハバーナ」などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カブレラインファンテ」の意味・わかりやすい解説

カブレラ・インファンテ
かぶれらいんふぁんて
Guillermo Cabrera Infante
(1929―2005)

キューバの小説家。共産主義者の両親のもとに生まれ、早くから政治に目覚め、バチスタ独裁下、弾圧を受けながらも文芸活動に携わる。その間に発表した短編が革命後『平和のときも戦いのときも』(1960)としてまとめられる。『熱帯の夜明け景観』(1964)でスペインのブレベ賞を受賞後は革命政府との確執もあってヨーロッパに移り住むことを決意し、やがてイギリス定住。1967年に前作を大幅に改稿し、キューバの俗語、ことば遊びを多用して革命前のハバナに住む人々の生活を描いた『淋(さび)しい三頭の虎』でラテンアメリカを代表する作家となった。以後、言語実験的な『文体の悪魔祓(ばら)い』(1976)、自らの性体験を交えてハバナでの青春時代を綴(つづ)った『亡き王子のためのハバーナ』(1979)などの小説や『夜ごとのアルカディア』(1977)、『映画、それとも鰯(いわし)』(1997)といった映画評論、葉巻をめぐるエッセイ『聖なる煙』(1985)、政治評論『我がキューバ』(1992)、音楽評論『わたしの至上の音楽』(1996)など多くのジャンルで異才ぶりを発揮した。97年スペイン語圏の権威ある文学賞、セルバンテス賞を受賞。

[安藤哲行]

『吉田秀太郎訳『平和のときも戦いのときも』(1977・国書刊行会)』『吉田秀太郎著『カブレラ=インファンテと新しい表現の追求』(『ラテンアメリカ文学を読む』所収・1980・国書刊行会)』『木村榮一訳『亡き王子のためのハバーナ』(1983・集英社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カブレラインファンテ」の意味・わかりやすい解説

カブレラ・インファンテ
Cabrera Infante, Guillermo

[生]1929.4.22. キューバ,ヒバラ
[没]2005.2.21. イギリス,ロンドン
キューバ生まれのイギリスの作家,エッセイスト,映画評論家。 1941年家族とともにハバナに移った。若くして文学活動に携わり,映画評論なども発表した。キューバ革命を支持し,1959年にカストロ政権誕生後,日刊紙『レボルシオン』の週刊文芸誌『ルネス』を創刊して活躍した。 1966年カストロ政権に失望してイギリスに亡命,その後イギリス国籍を取得した。 1967年実験的な文体で革命直前のハバナの夜の猥雑な景観を描いた小説『寂しい3頭の虎』 Tres tristes tigresで一躍有名になった。そのほかの作品に短編集『平和のときも戦いのときも』 Asíen la paz como en la guerra (1960) ,エッセー集『O (オー) 』 (1975) ,『文体の悪魔祓い』 Exorcismo de esti(l)o (1976) ,長編小説『亡き王子のためのハバーナ』 La Habana para un infante difunto (1979) ,映画評論集『20世紀の仕事』 Un oficio del siglo veinte (1963) ,エッセー『メア・キューバ』 Mea Cuba (1992) など。 1998年セルバンテス賞を受賞。

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