熱帯を南北両回帰線(緯度23度26分)に挟まれた地帯とした場合に、そこに生ずる気候帯(数理気候帯)のこと。面積にして2億平方キロメートル余りで、地球の全面積の約40%を占める。熱帯多雨気候ともいう。オーストリアの地理学者ズーパンによる気候帯では、年平均気温20℃の等温線が熱帯と温帯を分ける線としており、回帰線より2~3度高緯度となるが、この等温線はヤシの木や貿易風の極限界とほぼ一致している。ドイツの気候学者ケッペンの分類はズーパン同様の物理気候帯的区分法に加え、植生分布とも対応させたもので、現実によくあっている。それによると、最寒月平均気温が18℃以上が熱帯気候(記号A)で、雨の降り方により、熱帯雨林気候(Af)、熱帯季節風気候(Am)およびサバナ気候(Aw)の三つに細区分される。一般的特色としては、年較差が日較差に比べて小さく、降水量が多い。一年中ほとんど季節の違いがないが、夜は相対的に気温が低く、熱帯の夜は熱帯の冬であるとさえいわれる。したがって、熱帯夜という表現は気候学という学問上、間違った概念である。
熱帯の気候が温帯に及ぼす現象のうちもっとも顕著なものは熱帯低気圧で、これが発達しながら偏東風で西へ移動し、中緯度へ進んで偏西風にのるころに最盛期を迎える。これらは、日本周辺では台風、北米東岸ではハリケーン、インド洋とオーストラリア東岸およびマダガスカルあたりではサイクロンとよばれ、水資源としての利益と風水害をしばしばもたらす。
[福岡義隆]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また同じ海洋に面した地域でも,大陸の東岸は西岸と比べて気温の年較差が大きく,夏は高温,冬は低温で,いわゆる東岸気候,西岸気候のちがいがみられる。ケッペンは,最寒月18℃の等温線によって熱帯気候と温帯気候を区分し,最寒月の平均気温18℃以下-3℃以上を温帯気候,最暖月の平均気温10℃以上で最寒月の平均気温-3℃以下を亜寒帯気候,最暖月の平均気温10℃未満を寒帯気候とした。このように気温は年平均をみるだけでなく,最暖月と最寒月の気温も重要である。…
※「熱帯気候」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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