カルドア(読み)かるどあ(英語表記)Nicholas Kaldor

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルドア」の意味・わかりやすい解説

カルドア
かるどあ
Nicholas Kaldor
(1908―1986)

イギリスの経済学者。ハンガリーに生まれ、ロンドン大学を卒業後、同大学講師を経て1949年にケンブリッジ大学に移り、75年まで教授を務めた。彼の業績は多彩であり、初期には厚生経済学、不完全競争理論などで業績をあげたが、のちにケインズの影響を受け、ポスト・ケインジアンとして活躍した。その第一はケインズ体系の動態化であり、独自の景気循環理論を創案した。第二はその長期化であり、技術進歩関数を導入することにより、独特の成長理論を展開した。第三は分配論であり、ケインズの乗数理論を分配面に適用したケインズ派分配論を主張した。またケインジアンとして、新古典派理論、マネタリズムに対して鋭い批判を加えている。こうした理論的活動のかたわら、現実のイギリス経済に対して強い関心をもち、イギリスのEC加盟への反対、同国の租税改定への発言と総合消費税提唱、サッチャー流経済政策への批判などで注目された。

[一杉哲也]

『N. KaldorCollected Economic Essays, 8 vols. (1960~80, Gerard Duckworth & Co. Ltd., London)』『N・カルドア著、時子山常三郎監訳『総合消費税』(1963・東洋経済新報社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルドア」の意味・わかりやすい解説

カルドア
Kaldor, Nicholas

[生]1908.5.12. ブダペスト
[没]1986.10.1. ケンブリッジ
ハンガリー生れのイギリスの経済学者。 1932~47年ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの講師。 47~49年国際連合経済委員会,49年以降ケンブリッジ大学のキングズ・カレッジのフェロー,52年以降同大学講師,66年教授。不完全競争論,雇用理論,新厚生経済学,景気循環論,巨視的分配論,生産関数からの技術進歩関数の導出など,多方面で独創的貢献をした。巨視的動態論による景気分析モデルを作成 (カレツキ=カルドア景気理論) 。また厚生経済学において補償原理を提唱。主著"An Expenditure Tax" (1956) ,"Indian Tax Reform" (56) ,"Essays on Value and Distribution" (60) ,"Essays on Economic Stability and Growth" (60) ,"Capital Accumulation and Economic Growth" (61) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報