カレツキ(その他表記)Michał Kalecki

デジタル大辞泉 「カレツキ」の意味・読み・例文・類語

カレツキ(Michał Kalecki)

[1899~1970]ポーランドの経済学者。景気理論・分配論の研究で知られる。「景気循環の巨視的動態論」では、マルクスの再生産論を土台にして、ケインズに先駆ける理論を展開した。著「経済変動の理論」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「カレツキ」の意味・わかりやすい解説

カレツキ
Michał Kalecki
生没年:1899-1970

ポーランドの経済学者。経済理論の主流派の外にあって,独学で修得した経済学をもって先進資本主義経済の動態や社会主義計画経済,第三世界について論じた。ケインズ《一般理論》の公刊(1936)に先立つ1933年,マルクス再生産表式を枠組みに国民所得の決定を論じてケインズ革命を予告したが,その巨視的動学理論は,現実的な企業理論を基礎に,社会階級間の所得分配を理論の統合部分に置いて経済プロセスの動きを説明するもので,ケインズ体系よりも一般的かつ現代資本主義分析に適切とされる。36年祖国を出て55年帰国するまで,スウェーデン,イギリス,カナダでの研究生活を経て46年から国連に勤務するが,冷戦下のマッカーシズムに遭遇して抑圧を受けるや帰国して祖国の長期経済計画に取り組む。しかしスターリニズムの伝統下にあるゴムルカ政権の投資に偏重する経済計画と相いれず,61年には経済顧問の地位も退く。以降,中央計画学校の教授として後進の指導に当たるが,その人生は幾多の失意を経験するものであった。しかし正統派経済学に対するその包括的な挑戦は,ケインズ革命を徹底せんとしたポスト・ケインジアンの展開を鼓舞する淵源を成すものとなった。業績のエッセンスを集め自ら編纂(へんさん)した《資本主義経済動態論集》(1971)がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カレツキ」の意味・わかりやすい解説

カレツキ
かれつき
Michał Kalecki
(1899―1970)

ポーランドが生んだ世界的な経済学者。ポーランドのウージに生まれる。グダニスクの工業大学で工学を学んだが、在学中より経済学に関心を抱き、1929~35年の間、ワルシャワの景気・価格研究所で国民所得論を研究、33年に発表した『景気循環への一試論』で、資本主義経済循環の数理経済モデル(いわゆるカレツキ・モデル)の創始者となった。35年これをもとにした『景気循環の巨視的動態論』を発表したが、これはマルクスの再生産論から出発しながら、ケインズとは別個に、後の「ケインズ革命」に通じる思想を展開した画期的な業績であった。36年スウェーデンに、ついでイギリスに渡り、40年オックスフォード大学統計研究所員となる。戦後46年から54年まで国連事務局経済部次長を務め、55年ポーランドに帰り、政府顧問、計画委員会顧問、経済審議会副議長、コメコン代表などを歴任、ランゲとともに戦後経済の計画化に力を尽くした。66年アカデミー会員となる。61年以降ワルシャワの中央計画・統計大学で教鞭(きょうべん)をとり、社会主義経済成長論の完成に努めたが、68年春の修正主義攻撃に名を借りた同僚の追放に抗議していっさいの公職から引退し、70年4月17日、失意のうちに死去した。

[佐藤経明]

『カレツキ著、宮崎義一・伊東光晴訳『経済変動の理論』(1958・新評論)』『カレツキ著、竹浪祥一郎訳『社会主義経済成長論概要』(1965・日本評論社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カレツキ」の意味・わかりやすい解説

カレツキ
Kalecki, Michael

[生]1899.6.22. ウッチ
[没]1970.4.17. ワルシャワ
ポーランドの経済学者。景気論,分配論を研究。ワルシャワの経済研究所,ロックフェラー財団,オックスフォード大学の統計研究所,国際機関などを経てワルシャワ大学で景気変動論を講じる。またポーランドの経済計画委員会で社会主義経済計画論と資本主義諸国の景気分析に従事。マクロ的動態論に基づく数学的景気理論を展開し,J.M.ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』とほぼ同時期に類似の理論を展開した。主著『ケインズ雇用と賃金理論の研究』 Essays in the Theory of Economic Fluctuations (1939) ,『経済変動の理論』 Theory of Economic Dynamics (54) 。

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百科事典マイペディア 「カレツキ」の意味・わかりやすい解説

カレツキ

ポーランドの経済学者。ケインズと同時期にケインズ体系の基本的要素を研究し,さらに不完全競争をモデルに組み込んで巨視的動学理論を展開した。マルクスの理論から入ってケインズ学派の長期均衡モデルを考え出し,景気循環と経済成長を統一的な視点から分析,資本主義政府は完全雇用の所得を達成できないと主張した。その寡占的経済機構の分析は,ケインズの貨幣経済的認識とともに,ポスト・ケインジアンの狭義の意味での二大支柱とされる。

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世界大百科事典(旧版)内のカレツキの言及

【独占度】より

…ただし,資本集約度が著しく異なる二つの産業での独占力を比較するのには,ラーナーの独占度は不適切で,投下資本への収益率を利用しなければならない。 ラーナーの独占度はのちに,寡占産業での企業間競争を考慮して個別企業の独占力を指数化しようとしたロスチャイルドKant Wilhelm RothschildやパパンドリューAndreas George Papandreouの研究や,国民経済についての尺度として国民所得の分配の説明に用いようとしたM.カレツキの研究などによって継承された。独占【岩崎 晃】。…

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