C20H30O(286.45).アクセロフトール(axerophthol),ビタミン A1,レチノール,A1 アルコールともいう.ビタミンAはretinolを意味し,ビタミン A2 発見以来,区別するためビタミン A1 とよぶ.次のようにオールトランス形の化学構造をもつ.
淡黄色の柱状結晶.融点62~64 ℃.λmax 325 nm(2-プロパノール)で吸光係数E1cm1%1830.多くの有機溶媒,油脂に可溶,水に不溶.ビタミンAのクロロホルム溶液はSbCl3によって深青色を呈し,その吸収極大は620 nm にあり,E1cm1%5070である.そのほかの呈色試薬としては2,3-ジクロロ-1-プロパノール(GDH)がある.空気酸化を受けやすく,熱や紫外線に対しても不安定である.魚肝油,ミルク,バター,卵黄,胚芽に存在し,肝油類の不けん化部分から得るか,または合成する.生体内では遊離アルコール型のほか,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸などのエステルとして存在することが認められている.ビタミンAの欠乏は夜盲症,皮膚の異常乾燥症,および角化亢進,骨変化,神経変性および成長発育の停止の病因となる.A1 アルデヒドは網膜桿(かん)状体の感光色素タンパク質であるロドプシンの構成成分である.橙黄色の結晶.融点61~62 ℃.SbCl3呈色の吸収極大は664 nm にある.ロドプシン中の A1 アルデヒドは Δ11-シス形であるが,光の刺激を受けるとオールトランス形に異性化され,同時にタンパク部分から解離する.A1 酸は視覚に対しては効果はないが,正常な発育と正常な皮膚を保つためには A1 アルコールと同様の効果を示す.淡黄色の針状結晶.融点180 ℃.SbCl3で赤紫色を呈し,吸収極大は573 nm にある.ビタミン A2 は淡水魚の肝油から発見され,次のような構造式をもつ.ビタミン A1 と吸収スペクトルは若干異なり(λmax 351 nm),生理活性はビタミン A1 の約40% である.ビタミン A1 と同様,それに対応するアルデヒド,酸,エステルなどがある.高等植物や原生生物などに広く存在する.カロテノイド(たとえば,β-カロテン)は,動物体内に摂取され小腸壁でビタミンA作用物質(A1,A2)に転換されるビタミンの前駆物質で,プロビタミンA(provitamin A)とよばれる.[CAS 68-26-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…空中酸素により容易に酸化される。カロチンは動物体内で酸化され2分子のビタミンAに変化し,さらにビタミンAアルデヒド(レチナールretinal)となり視覚の光受容に重要な機能をもっている。また補助色素として光合成に関与し,光の破壊作用からの保護機能などを有している。…
… 現在,ビタミンは15種ほどが知られ,一般に脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに大別されている。前者にはビタミンA,D,E,Kなどがあり,脂肪に含まれる必須脂肪酸をビタミンFということもある。後者にはビタミンB1,B2,B6,B12,C,ニコチン酸,パントテン酸,ビオチン,葉酸などがある。…
…前者は強い光に反応して色覚をつかさどり,後者は弱い光のもとで明暗を識別するが,色覚には関係しない。ロドプシンは,細胞内のディスク膜の成分である分子量3万8000のオプシンopsinに,ビタミンAの誘導体11‐シス‐レチナールretinalが結合した複合タンパク質である。ビタミンAが欠乏するとロドプシンの合成が損なわれ夜盲症の原因となる。…
※「ビタミンA」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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