カンテミール(読み)かんてみーる(英語表記)Антиох Дмитриевич Кантемир/Antioh Dmitrievich Kantemir

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カンテミール」の意味・わかりやすい解説

カンテミール
Cantemir, Dimitrie

[生]1673.10.26. ヤシ
[没]1723.8.23. ハリコフ
ルーマニアの文学者,政治家。ロシア詩人 A.カンテミールの父。モルドバ公国の王家に生れ,成人するまで人質としてオスマン帝国で教育を受けた。 1710年にモルドバ公国の王位につき,ロシアと結んで国の独立のためオスマン帝国軍と戦ったが敗北し,11年にロシアへ亡命ピョートル大帝の側近一人として公爵に叙せられた。ラテン語で書かれ,のちに各国語に訳された『オスマン帝国興亡史』 Historia incrementorum atque decrementorum aulae Othomanicae (1716) ,モルドバの歴史,地理,民俗の研究書『モルドバ国誌』 Descriptio Moldaviae (16) などを著わした。

カンテミール
Kantemir, Antiokh Dmitrievich

[生]1708.9.21. コンスタンチノープル
[没]1744.4.11. パリ
ロシアの詩人,外交官。ロシアの古典主義文学創始者の一人。主著風刺詩I-IX』 Satiry I-IX (1729~39執筆,62刊) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンテミール」の意味・わかりやすい解説

カンテミール
かんてみーる
Антиох Дмитриевич Кантемир/Antioh Dmitrievich Kantemir
(1708―1744)

ロシアの詩人。父はトルコ政府に追われてロシアに亡命し、ピョートル1世によって貴族に列せられたモルダビア王。早くから文才を現して開明派と交わったが、1730年代にはその鋭い才気のためかえって宮廷から遠ざけられ、後半生は外交官としてイギリス、フランスなどに駐在し、パリで没した。代表作は『おのが理性に寄す』(1729)をはじめとする9編の風刺詩で、ピョートルによって始められた近代化に反対する保守的な支配層に向けられたもの。ロシア国内でそれらが印刷されたのは作者死後である。ロシア古典主義文学の創始者の一人。

中村喜和

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